114話 しっかりしてくれよ、ニンジャ。
114話 しっかりしてくれよ、ニンジャ。
(……『ボクの7割スペックがもう一人いたから』って……『だから何?』って思わない?)
(……まあ……正直、思うけれど……)
なんて感じで、『心の中会議』をしていると、
7番が、興味深そうに、ボクが入手した指輪と説明書を交互に見て、
「……アバターラ?」
と首をかしげたので、ボクは、
「え? そんなことも知らないの? おいおい、しっかりしてくれよ、ニンジャ。頼むぜ、ニンジャ。ニンジャっていったら、この世の全てを知りつくした上で、いつも不敵にニヤリと笑っている存在だろ?」
「……」
だいぶ渋い目で睨まれてしまったので、
ボクは、その辺でチョケるのをやめて、
「分身魔法の上位互換らしいっすよ。オーラドールってあるじゃないですか。あれの上位互換らしいっす。ようするに、この指輪をつけると、7割スペックの自分を召喚できる感じっすねぇ」
サクっと説明してあげると、7番は、『ほう』と感嘆してから、
「1回、ためしてみたら?」
と言ってきたので、ボクは、
「いえす、まむ」
軽く返事をしながら、指輪を装着し、
「いでよ、アバターラ。そして願いを叶えたまえ」
と、軽くチョケつつ、アバターラを召喚してみた。
すると――
指輪が、ほんの一瞬だけ、じわっと熱くなり、
ボクの足元に、青色の魔法陣がぐにゃりとにじみ出た。
魔法陣の中心から、モヤが立ち上り、空気が震える。
ビリ……ッと耳鳴りのような音がして、空間に細かいヒビが入ったような違和感が走る。
世界が、一瞬だけズレたような気がした。
そして、そこに――
ズシン、と妙に生々しい重量感と共に、
『年齢17歳ぐらいで顔面偏差値48ぐらいの目つきが悪いニーチャン』が現れた。
黒髪黒目で中肉中背。
ボテっとした、腫れぼったいまぶた。
日本人的な、のっぺりした顔。
(え、だれ、これ? アバターラって、ボクの分身を出す魔法じゃないの?)
と、モンジンに尋ねると、モンジンがボソっと、
(これ……まさか……俺の分身……か?)
(……え? そうなの?)
(前も言った通り、俺は『辞書的な情報』以外は何も覚えていない。だから、自分の顔も覚えちゃいない、が……でも、なんか……すさまじい既視感が……何度も見てきて、何度も毛嫌いしてきた顔……うん、多分、俺だな……そんな気がしてならない)
(ふーん……)
意味不明な状況の中、テキトーに相槌を打ちつつ、
『モンジンの分身(?)』の顔をジっと見てみる。




