109話 殺人理由。
109話 殺人理由。
『魔王ズ』の出動時間は30秒ぐらい。
だから、まだ、今日は4分30秒ほど魔王を召喚できる。
……なんてことを考えていると、
心臓をぶち抜かれたダンジョン魔王の死体が、ヒュンヒュンと形と変えていく。
そして、魔王の死体は、今度こそ、宝箱の形状に変化したのだった。
「……ふぅ」
と、ボクは特に何もしていないが、
一仕事を終えた達成感をかもしだしながら、
額の汗をぬぐうポーズをとる。
そこで、7番が、
「あの二人……念のため、殺しておくが、それでいいな?」
と、『食事のあとの食器洗い』ぐらいのテンションで、
『カルシーン伯爵と3番の始末』を提案してくる7番。
さすが、忍者は格が違った。
極端だな、流石ニンジャ、極端。
「いや、殺す必要はなくない? ……ここで殺したら、なんのために、二人が気絶するまで魔王を召喚するのを我慢したのかって話だし」
「この二人を生かしておくプランも考えたが、リスクを考えれば、殺しておいた方がいいという結論に達した」
「……」
「この二人を生かすとなると、色々と『言い訳』を用意する必要がある。あんたが最下層にいた理由……なぜ、生きて帰れたのか、その理由……」
「転移してきただけだから、ここが最下層かどうかは伯爵と3番には分からないよね。『ダンジョン内部の特殊なフロア』に飛ばされて、『そこで、強大なモンスターに襲われた』ということで話は終わりだよ。で、ボクがここにいる理由は、7番が、あの時、とっさに言ってくれたように『ボクらも転移のワナにかかったから』でことたりる。ここから生きて帰れた理由は……それも、たまたま転移のワナが発動してくれたから……で通ると思うよ」
「伯爵と3番が気絶したタイミングで都合よく転移のワナが発動した、と?」
「ダンジョンのワナに精通している人なんていないんだから、いくらでも騙し通せると思うよ」
「……『疑念の余地があるかどうか』が争点だ。違和感だらけで極めて不自然。ラストローズ辺境伯は、『猿の17番が魔王使いではないか』と疑っている。その疑念を膨らませる結果になりかねない」
「そ、そうかなぁ……ボクはただ転移に巻き込まれただけの奴隷だよ」
「そういう風に雑に処理してもらえる可能性もあるが、『伯爵と3番が生き残ることができた』のは、『猿の17番が魔王を召喚して、ダンジョン魔王を倒したからである』という邪推をされる可能性もゼロではない」
「いや、でも、殺したらさぁ……そっちの方が、色々とアレじゃない?」




