108話 おーけー、まむ。
108話 おーけー、まむ。
「……くそぉ……」
そして、ついには動かなくなった3番。
その様を見て、カルシーン伯爵が、絶望の表情を浮かべているのが見えた。
泣きそうな顔。
今にも涙が零れ落ちそう。
だが、カルシーン伯爵は、グっと奥歯をかみしめて、
「ああああああああああ!!」
気力と血潮を振り絞って、魔王に連撃をしかける。
何度も、何度も、魔王に向けて剣を振り下ろす。
だが、無数のバリアに阻まれて、魔王にダメージは一切通っていない。
次第に、伯爵の動きも鈍くなる。
伯爵は頑張った。
本当に頑張った。
けど……
「ぁ……」
デバフの蓄積が限界を超え、カルシーン伯爵は、ばたりと倒れた。
ピクリとも動かなくなったカルシーン伯爵と針土竜の3番。
2人が完全に気絶したのを確認してから――『蝙蝠の7番』が、ボクのもとに駆け寄ってきた。
「あの二人の意識は完全に飛んでいる。……あとは任せた」
「……おーけー、まむ」
と、軽く血を吐きながら、返事をしつつ、
ボクはモンジンに依頼を出す。
(もういいだろ?)
(ああ。ここからは反撃の時間といこう)
そして召喚される。
暴力の魔王と、万能の魔王。
既に知っているが、ここで、あらためて、
神眼モノクルで、魔王たちのステータスを確認してみた。
ウチの二人と、ダンジョン魔王の間には、
プロボクサーと中学生ぐらいの差がある。
余裕で勝てる。
と、そう思っていると、
ゼラビロスが、ボクと7番に両手を向けて、
「大治癒ランク20」
と、『素晴らしい効果を誇る大回復魔法』をかけてくれた。
HPだけではなく、すべての状態異常がサクっと回復。
さすがゼラビロス。
何でもできる魔王は格が違った。
攻撃も回復も耐久もピカイチ。
オールラウンダーの味方ってのは、こういう時、本当にありがたいね。
ボクと7番を回復させてから、
ゼラビロスとパリピーニャは地面を蹴って、ダンジョン魔王に特攻を仕掛けた。
ダンジョン魔王は、ゼラパリの猛連撃に対し、
防御魔法を展開させてきたが、正直、話にならない。
人間の攻撃は防げても、魔王の攻撃は防げるわけがない。
多重展開していたバリアは、アッサリと砕かれた。
「げはぁああっ!!」
パリピーニャの拳がダンジョン魔王の心臓をぶち抜く。
開かれた大きな風穴。
カルシーン伯爵と3番が、あれだけ必死になっても、ほとんどダメージを与えることができなかったダンジョン魔王も、ウチの『魔王ズ』にかかれば、ほとんどワンパン。
ダンジョン魔王が死んだのを確認するや否や、『魔王ズ』は、闇に溶けていく。




