107話 正々堂々。
107話 正々堂々。
(一緒にするな。俺は魔王を召喚できる)
(く、くそぉ……それを言われると、反論の余地がない……)
そこで、3番が、
「――伯爵! 今ぁあ!」
青い顔で血を吐きながら叫ぶ。
命がけの気迫。
普段はシニカルで気だるげな雰囲気を醸し出している3番も、流石に、この状況では熱血にならざるを得ない模様。
……ちなみに、ボクのブレーン『蝙蝠の7番』は、
遠距離からちまちま魔法の攻撃をしていた。
3番とカルシーン伯爵は、必死の形相だが、
7番はクールに全体を俯瞰している。
7番は、時折、こっちにチラっと視線を送ってきた。
以心伝心ってわけじゃないけど、なんとなく言いたいことが伝わってきた。
どうやら、7番も、モンジンと同じように、
『合理的に、この厄介事を処理する手段』を考えているっぽい。
つまりは『3番と伯爵が気絶したタイミングでパリピーニャ&ゼラビロスを召喚してダンジョン魔王を殺す』ということ。
7番は、『どうせ魔王を使えば勝てるのだから、無理に頑張らず、生きる事に専念している』といった印象を抱くムーブを徹底している。
――麻痺の影響で動きが鈍っているが、カルシーン伯爵は、ギニリと剣を握り直した。
奥歯をかみしめる音がこっちまで聞こえる。
そのまま覚悟を叫びつつ、体重を乗せて、ダンジョン魔王に斬りかかった。
――かなり気合の入った一撃だったが、しかし、その剣は、魔王の頭に当たる直前で、
バイン!
と、奇異な音と共に、はじかれた。
「ぼ、防御魔法?! ……いつの間に、こんなに……」
どうやら、ダンジョン魔王は、気付かないうちに、無詠唱で大量のバリアを張っていた模様。
カルシーン伯爵は、血が出るほど唇を噛む。
ダンジョン魔王の、『防御に徹して状態異常を押しつけてくるだけ』の戦法に辟易している様子。
「ぐ……まずい、これ以上長引いたら……」
血を吐きながら、
カルシーン伯爵は、
「魔王なら! 正々堂々と戦えぇええ!!」
叫びながら剣を振る。
……『殺し合い』で正々堂々もクソもないと思うけど……
なんて思っていると、少し離れた場所にいる『針土竜の3番』が、
「う……ぐふっ……」
毒と麻痺に耐えきれなくなったようで、ガクっと膝から崩れ落ちた。
3番は、中距離から、カルシーン伯爵をサポートするように、一心不乱に呪縛のデバフを撒いていた。
だんだん、動きが重くなっているなぁ……とは思っていたが、ついに気力の限界に達した模様。
「く……そ……こんな……ところで……くそぉ……」




