105話 『根性狂いのモンジン』が一番の障壁。
105話 『根性狂いのモンジン』が一番の障壁。
(しょ、小学生か……っ。……数字ってのは、やみくもに大きくすればいいってもんじゃないんだよ……)
モンジンの『700億分の1マウント発言』に対し、ボクは反射的に、そう吐き捨ててから、
(ぃ、いや、アホなボケにツッコんでる場合じゃない。……モンジン、はやく魔王を召喚して。死ぬって、マジで……)
(お前、この前、偉そうに言っていたよな。自分は根性があるから、苦悩に耐えられるって)
――『ボク、結構、我慢強いから、耐えられると思うよ。過酷な奴隷生活を11年も耐えた男の根性をナメないでいただきたい』
……いや、確かに言ったけど……
あんなもん、その場だけのノリだから……
ガチじゃないから……
(根性の鬼、猿の17番さんなら、耐えられるさ。というわけで、頑張れ。気合いだ、気合だ、気合いだ)
(冗談言っている場合じゃないんだよぉお!)
(1ミクロンも冗談は言ってねぇ。気合いを入れろ。毒で『死ぬかどうか』はHP次第だが、『気絶するかどうか』は根性しだい。俺は詳しいんだ)
モンジンと『生産性のない舌戦』を繰り広げている間、
カルシーン伯爵が、
「っ……く、そ……ぜ、『全体治癒ランク7』!!」
すぐさまチームメンバー全員に回復魔法を使う。
人類最高クラスの『ベホ〇ラー』。
緑の淡い光が、『カルシーン伯爵・3番・7番・ボク』の体を包みこむ。
HPは多少回復したし、毒素も一部中和した――が、完全には打ち消せない。
ちょっとマシになったけど、まだ苦しい。
サウナチャレンジ中に、水を一杯飲んだ……ぐらいの清涼感。
ありがたいことは間違いないけど、根本の問題は一切解決していない。
毒だけでもしんどいのに、ダンジョン魔王はさらに嫌がらせをぶちかましてくる。
ほとばしる麻痺の波動。
『いつのまにか地面に張り巡らされた闇色の符』が弾けるように発動。
この場にいるダンジョン魔王以外の全員の動きが極端に鈍くなる。
手足の先が痺れ、思うように力が入らない。
「く、そぉおおおおお! 『光撃ランク7』!!」
カルシーン伯爵が、『底意地』を叫びながら、前に出る。
右手に込めた魔力がいななく。
攻撃型の魔法を豪快に発動。
輝く魔力の波動が魔王に直撃。
――回復に攻撃に、大忙しの伯爵。
どうやら、伯爵は、ゼラビロスと同じく『万能型』っぽい。
器用な万能タイプは、死線で非常に重宝され、だから酷使されるのが運命。
ただ、器用貧乏型は、特化型に比べて火力が低いと相場が決まっている。




