103話 『ダンジョン魔王』VS『カルシーン伯爵&蝙蝠の7番&針土竜の3番』。
103話 『ダンジョン魔王』VS『カルシーン伯爵&蝙蝠の7番&針土竜の3番』。
カルシーン伯爵が高潔で気高い貴族だというのは知っていたけど、まさか、ここまでとは……いや、マジでアッパレ。
ボクが素直に感心していると、3番と7番が、しんどそうな顔で一度お互いの顔を見つめ合ってから、『命令されてしまえば仕方がない』……といった感じで、カルシーン伯爵のサポート体制に入る。
こうして始まった『ダンジョン魔王』VS『カルシーン伯爵&蝙蝠の7番&針土竜の3番』の激闘。
『チーム・カルシーン伯爵』の突進を目の当りにし、
ダンジョン魔王は、ニタリと笑う。
腕組みをといて、マエストロのようにリズミカルに両手を動かす。
その指先は、演奏家のように滑らかで、けれどどこか、不気味な軌道を描いていた。冷たい意志が、空間にゆっくりと染み込んでいくような感覚。
すると、魔王の全身から『黒く不気味な霧』が噴出されて、フロアの空気にゆっくりと溶けていく。
カルシーン伯爵の初手がうなる。
手にした魔法剣の刃が、青白い光を放つ。
重そうだが、しかしその分だけ鋭い踏み込み。
スピード感のある、力強い袈裟斬り。
前衛を担う者としての、真っ直ぐなプライドが見える。
ギリギリのところで回避したダンジョン魔王。
だいぶ余裕がありそうな表情。
カルシーン伯爵を睨みつつも、時折、ちらりと、周囲を観察している。
もしかしたら、ゼラビロス&パリピーニャを警戒しているのだろうか……
と、そこで、『針土竜の3番』が、カルシーン伯爵のサポートを展開。
呪文詠唱は省略され、指の動きと視線だけで魔法が放たれる。
無詠唱魔法とは、また高度なことを……
ボクでは一生かかっても無理そうな芸当。
――紫がかった鎖が、床を這って魔王の足元に絡みつこうとする。
たぶん、呪縛の魔法。
が――その鎖は、魔王の足元に届いた瞬間、スッと霧のように消えた。
それを見て、3番が舌打ちしながら、
「……あたし程度の呪縛は相手になりませんって? ……泣きたくなるのだが……」
なんて、ブツブツ言っていると、
ダンジョン魔王の背後から『影のような黒い竜』が一瞬だけ浮かび上がり、すぐに消える。
黒く不気味な霧と融合していっているみたい。
「……なんだ?」
と、3番が首をかしげたタイミングで
その場の空気がグニャリと歪んだ。
慧眼のカルシーン伯爵が顔をゆがませ、
「……ど、毒か……」
そうつぶやいた直後、3番とカルシーン伯爵が血を吐いた。




