101話 無能なボクと、有能な7番。
101話 無能なボクと、有能な7番。
いまだイマイチ状況が理解できず、ただただボクがテンパっていると、
『蝙蝠の7番』が、間に入ってくれて、
「そうだ。あなた達も?」
と、冷静にそう尋ねる。
何一つやましいことはない、というシレっとした顔。
『7番の質問』に、カルシーン伯爵が、ダンジョン魔王をにらみつけたまま、
「我々、地下迷宮研究会は、定期調査で、このチロキシンの地下迷宮を探索していた。地下2階の探索をしている最中に、転移のワナにかかり、ここにいる」
7番に負けないぐらい、冷静に、たんたんと、端的に、
カルシーン伯爵は状況を伝えてくれた。
7番は、一度頷いてから、さらに冷静な声音で、
「端的な状況説明、いたみいります、伯爵。……私はラストローズ辺境伯の命令で、17番の影に潜んで監視をしていたのですが、『入り口付近をうろうろしている17番』を監視している時に転移のワナにかかりました」
すらすらと嘘をつく7番。
あまりにも彼女の舌がなめらかなので、ボクも、7番の話を信じそうになった。
……そこで、3番が、7番に、
「17番を監視していることはバラしてもいいのか?」
「状況的にそれどころじゃないから、生き残るため、17番には、さっき端的に説明して共闘を申し込んだ。この緊急事態では猫の手も借りたい」
つらつらと、矛盾なく、
『ボクらの共犯を悟らせない』よう、
慎重かつ的確に言葉を選んでいく7番。
有能だ……彼女は、間違いなく、ボクよりもはるかに有能だ。
カノジョが味方になってくれて、本当によかった……っ。
そうでなければ、ここで詰んでいたかもしれない……
いや、まあ、詰んではいないかもしれないけど……間違いなく、色々と怪しまれていただろうな……
そこで、カルシーン伯爵が、ダンジョン魔王をにらんだまま、
「状況は理解した。それで……あそこで腕組みをしている女性型のモンスターは……もしかして、魔王か? ……私のサードアイでも何も見えないとなると、そうとしか……」
カルシーン伯爵のサードアイなら、相手が最上級モンスターでも、『だいたいの強さ』ぐらいは分かるだろう。
けど、魔王が相手なら、流石に無理。
そこで、『蝙蝠の7番』が、言葉を選びながら、慎重に、
「私のサードアイでも、あの女型モンスターの強さが何も見えません。3番……あなたはどうだ?」
問われて、『針土竜の3番』は、
「私の目でも見えない……それに、あの身のこなしや、たたずまいや、ほとばしるオーラは、かなり魔王っぽい」




