98話 よってたかって幼女をイジめるボクら。
98話 よってたかって幼女をイジめるボクら。
ボクが心の中で、モンジンと、どうでもいい対話をしている間も、
――パリピーニャはとまらない。
そのふとももが、腕が、指先が、空間を裂く刃となる。
踏み込みのたびに衝撃波が走る。
ダンジョン魔王は、死に際で、大量の防御結界を張るという最後っ屁をかましてみせた。
『HPが10%を切ったら発動する最強防御』みたいな雰囲気だ……と、モンジンがコソっと教えてくれた。
細かいことは正直よく分からないけど、ダンジョン魔王が死にかけていることだけはよくわかった。
タイムリミットまで、あと1分以上。
そろそろ日をまたぐことも踏まえると、リミットは6分以上。
それだけあれば、確実に勝てるだろう。
パリピーニャの連打で、ダンジョン魔王の結界が一枚、また一枚と剥がれていく。
ダンジョン魔王の周囲に浮かんでいた魔法の龍の残骸が、ばらばらと崩れ落ちた。
ゼラビロスが、パリピーニャの追撃とばかりに、強大な魔力を両手に集めていく。
手の中で『エネルギーの塊』といなった黒い球体を、ダンジョン魔王に向けて放出。
バチバチバチバチィと凝縮された暴力が炸裂。
まだ終わらない……トドメとばかりに、パリピーニャが飛翔する。
上空からカカト落とし。
火花のようなオーラが稲妻のような軌跡を描く。
ダンジョン魔王の細い体が、それを拒むように魔力を放つが、もう遅かった、
地面に向かって撃ち落とされたかのように、ダンジョン魔王が床に激突。
爆風。沈黙。ひと呼吸のあと、フロアに静寂が戻る。
今日という日が終わるまで……残り20秒。
ダンジョン魔王が完全に沈黙したのを確認してから、
パリピーニャとゼラビロスは、スゥっと溶けるように消えていく。
疑いようのない完全勝利。
……そこで、ボクは、頭をぽりぽりとかきながら、
「勝った……のはいいんだけど、なんか、後味が悪いねぇ。よってたかって、幼女をイジメたみたいで。……今後、子供タイプの魔王は、勘弁してほしいなぁ」
ボソっとそう言うと、
7番が、息をつきながら、
「あの魔王……確かに、見た目は幼い子供のようだったけど、『使っていた魔法』は、どれも、とんでもない性能のものだったし、こちらに対する殺意も本物だった。もし、あんたの魔王召喚能力がなかったら、あの魔王は、私たちを、笑いながら八つ裂きにしていただろう。こっちを全力で殺そうとしてきた相手に情けをかける必要などない」
「いや、まあ、わかっているんだけどねぇ……」




