81話 ついに、ボクのラブストーリーがはじまった。
自作コミカライズ版31話をご購入いただいた読者様へ。
本当にありがとう<m(__)m>
ブーストしてくださった読者様……本当に、ずっと、ずっと、ありがとう!
その想いに応えるべく、まだまだ、まだまだ、頑張っていきますよぉ!
81話 ついに、ボクのラブストーリーがはじまった。
《雅暦1001年7月15日 昼》
昼休みの間に、明日挑む予定の『エストロゲンの地下迷宮』への通行証をとっておこうと、家を出たところで、ボクは、
「猿の17番。話がある」
『影のある美女』に話しかけられた。
この前会った『針土竜の3番』も、なかなかの威圧感だったが、
今回の美女は、さらにもう一歩、踏み込んで、闇色が強い気がした。
歩き方が静かすぎる。
まるで影が実体化して歩いているみたいだった。
服装こそ整っていたが、漂う空気はどこか獣じみていて、血の臭いすら感じる気がする。
こういう人って、もう、オーラが根から違うんだよね。
ヤクザとかとも、一味違う……血の沁み方が別格というか……
比喩じゃなくて、本当に人を“消した”経験がある人の、それだ。
ボクは、普通にビビりながら、
「ぁ、はい……なんでしょう……ボク、なにか、どこかで、お気にさわることしました?」
指紋が蒸発する勢いで揉み手をしながら、相手の御機嫌をうかがっていく。
ボクの身の安全が保障されるのであれば、ボクの指紋なんか、どうなったっていい。
煮るなり焼くなり好きにすればいいんだ。
「私は蝙蝠の7番」
影のある美女は、一切装飾のない簡潔な自己紹介をしてから、
「……まずは、これを読んでくれ」
そう言いつつ、懐から取り出した手紙を渡してくる。
ついに、はじまったか。
ボクのラブストーリーが。
恋文から始まるネバーエンディングな永久に共に。
転生前は、バレンタインの義理チョコすら、一度ももらったことがないボクだけれど、
転生チートな物語の中では、当然、モテモテってか。
(……現実逃避は楽しいか?)
それなりにね。
ラブレターじゃないのは、もちろんわかっているよ。
正直な話をするなら、嫌な予感しかしていない。
……もっといえば、マジでラブレターだったら、普通に嫌だし。
この女の人、めっちゃ目つきが怖いから。
完全に暗殺者の目なんだよ。
比喩とか、シャレとかじゃなく、もう、ガチで、何人も殺している目をしている。
ふと、7番の目を正面から見てしまった。
その瞬間、胃の奥がきゅっと冷たくなった。
見透かされている。弱さも、嘘も、全部……気のせいだろうけど、気のせいじゃない気がした。
そんなヤバい女性とネバーでエンディングなトゥルーストーリーは刻めない。
心の中でごちゃごちゃ言いつつ、手紙を読んでみる。
絶句した。
ここまで最悪の展開が待っているとは思っていなかった。




