74話 ボクは悪人じゃないよ、信じてくれよ!
74話 ボクは悪人じゃないよ、信じてくれよ!
2体召喚できるようになったのは、ダンジョン攻略を主軸にしている現状では、マジでだいぶありがたい。
今まで、ゼラビロスくんは、存在感『空気』全開の後方腕組み彼氏状態になっていたけど、これからはツーマンセルで暴れられる。
バランス型のイケメン魔王と、前陣速攻のスーパーパワーガール。
マパネットとパリピーニャのコンビも悪くない。
ちなみに、パリピーニャはパーティから絶対にはずしません。
一生使い続けます。
見える。ボクにも、将来が見える。
……ゼラビロスが羽交い絞めにして、動けなくなったところを、パリピーニャが連打。
これで、秒殺だろう、誰が相手でも。
最終フロアにいくまでに2分ちょっと。ボスを倒すのに1分。合計3分。
2分ほど余るから、残りの時間は――パリピーニャとのティータイムにあててやろう。
ダンジョンでデートってのも悪くない。
「やっと人生が『チートもの』っぽくなってきた。まあ、まだまだ、サバイバル感が否めないけど。……『魔王を召喚できるのが5分だけ』ってのをどうにかしてほしいね。将来的には、たぶん、時間問題も、どうにかできると思うけどね。『召喚時間を伸ばすタイプの超神聖水』を見つければ解消される問題じゃないかと思う。その時は、またモンジンが苦しむことになるけど……まあ、でも、苦しむのはボクじゃないから、別にいいけど……」
(お前、マジか)
モンジンの怒気が、微弱な霊圧になって内側からプレッシャーとして伝わってくる。
物理的な温度は変わってないのに、背筋がゾワッとする感じ。
「じょ、冗談だよ」
(いや、冗談じゃないな……お前、マジで、『どうせ苦しむのはモンジンだから、別にいっか』って思っているだろ)
「……思ってないよ」
正直、思っている。
けど、それも、普通じゃない?
ボクが特別悪いとかじゃなく、普通は、そうだよね?
いや、ボクだって、苦しみを分かち合うことができる状況なら、多少は、『一緒に、痛みを背負わなくもない』……と『考えていなくもない』けど、現状だと、モンジンに苦しんでもらうしか術がないんだから、仕方がない。
そう。これは仕方がないんだ。
「申し訳ないとは思っているけど、今後も、同じ水を見つけた時は、迷わずのむからね。それがお互いのため……だろ? それに。苦しんでいたのは、ほんの数秒だったから……そこまで大変でもないだろ?」
(腹立つわ、こいつぅ……味わわせてやりてぇ……あの水を飲むのがどんだけキツいか、分からせてやりてぇ。なんか、方法ねぇかなぁ……自爆とかできねぇかなぁ……)




