64話 強者以外に価値はない世界。
64話 強者以外に価値はない世界。
ボクとモンジンが呑気にお喋りをしている間に、
パリピーニャが、一瞬で、ファイズマリード5体を瞬殺してしまった。
いつもと同じ。
ただ優雅に、秒で片付けあそばされて、艶やかにおかえりあそばされる。
魔王パリピーニャからすれば、最上級精霊種も『HPが少ないザコ』でしかない様子。
「……ここまで、色々な種類のモンスターが出てきたけど、ボク視点だと、マジで、差がまったく無いんだよなぁ。……多分、それぞれ、明確な個性とか個体差とかあるんだろうけど……どれもワンパン過ぎて……」
(戦場だと強者以外に価値はない。それが世の真理だ)
「真理って切ないねぇ」
などと、中身のない会話をしていると、
奥の壁に、スゥっと、浮かび上がるように、『大きな扉』が出現した。
流れとしては、前の時とまったく同じだ。
この扉の出現条件は、『時間経過』ではなく、
ほぼ確で、『モンスターを処理すること』だろう。
そして、おそらく、この先に魔王がいる……
現在時刻は23時57分で、
『本日の魔王を召喚できるタイムリミット』まで、
あと2分30秒ぐらい。
……時間調整、完璧。
7分以上あるんだから、なんとかなるだろう……多分。
――などと思いつつ、
ボクは、ゆっくりと扉を開いた。
★
扉の先にあった階段を下りて、下のフロアに辿り着くと、
そこは、前と同じく、上とほぼ同じ構造をしていた。
広さは、体育館サイズ。
そして、フロアの中央には……
「やっぱり、魔王だね……どうやら、ダンジョンの構造は、どこも一緒らしい……」
この広いフロアのど真ん中に、まがまがしい玉座が一つ。
そこに、『異常に禍々しいオーラ』を放っている怪物が鎮座。
「存在値500……ステータス的には……MPと魔法攻撃力が高いから……魔法アタッカータイプ……かな。見た目は脳筋っぽいけど」
人型で、かなり背が低い小柄なオッサンタイプ。
スキンヘッドにモヒカンみたいなツノ。
半裸で、腰巻一丁。
『数珠みたいなアクセサリ』を、
手首、首、足首と、
全身の首という首にじゃらじゃらつけている。
「まあ、魔王の見た目なんて、あてにならないけどね。モデル体型スレンダーな美女パリピーニャが、バキバキの前衛アタッカーなんだから」
魔王は、玉座に腰をかけたまま、何も言わず、ジっとこちらを睨んでいる。
最初は、こっちを睨んでいないといけない決まりでもあるのだろうか。
――と、そこで、ボクの中にいるモンジンが、
(……存在値は500前後。現闘ランクは『俺的1000段階評定』中の『5』ぐらいだな。たいしたことねぇ)




