63話 絶望を殺す時の、最低限の心構え。
63話 絶望を殺す時の、最低限の心構え。
(これ以上、イライラして血圧を上げたくないから)
というモンジンのセリフに、ボクは、
「幽霊だから血圧とかもないはずなのに……実際、いつも、カリカリして、血圧が高い印象だよね。電車の中で暴れる不審者みたいで、痛々しい」
(俺が痛々しいという根拠を言えぇ!! お前は頭が悪い! 本当だからだ!)
「絶対、日本人だよなぁ……それも、だいぶ陰キャ寄りで、厨二で、友達が一人か二人しかいない感じの……」
などとブツブツ言いながら、
ボクは、自分の判断で、階段を下りて、6階へと進む。
6階に降りて、広いフロアに出たところで、
背後からガシャンと大きな音がした。
慌てて振り返ってみると、階段が消えて壁になっていた。
「うわぁ……うざぁ……」
ただの本音をつぶやいて天をあおぐ僕。
そんなボクに、モンジンが、
(経験上、何かしらのワナがくるであろうことは予測ができていたし、時間的な意味での対策もしてきただろう。凛としろ。前を向け。『すべては想定の範囲内』と叫びながらニヤリと笑え。それが、絶望を殺す時の、最低限の心構えだ)
「言うことが、全部、厨二病なんだよなぁ……」
閉鎖された空間は、体育館ぐらいのかなり広いサイズ。
ダンジョン内部って、このサイズのフロアが多い気がする……
コピペして作ったんだろうか……
などと思っていると、目の前に、同じ形状のモンスターが5体召喚された。
「状況的には前と同じだね……モンスターの種類は違うけど。……初めて見るタイプだ。今まで、一度も出てきてないよね、あれ」
フードみたいななのをかぶった……キモい精霊みたいなモンスター。
(ファイズマリードが5体か……殺意がハンパじゃないラインナップだな)
「どういうモンスター?」
(その、神眼モノクルは飾りか?)
「ステータスは見えるけど、それだけじゃ分からないこともあるでしょ。あのファイズマリード……他の最上級と比べて、ものすごい、HPが少ない……ってことは分かるけど……あれ、なんで?」
(ファイズは精霊種だからな。精霊種は、大量の上位魔法を習得している個体が多くて、だいぶやっかい。HPが極端に低いのが弱点で、完璧に対策していれば余裕で倒せるんだが、耐性値がエグい種族だから、特効魔法とかアイテムとかがないと、完封される可能性があるモンスター)
「メタスラみたいな感じか……ボク、対策とかまったくしてないけど、勝てるの?」
「パリピーニャがいれば余裕。火力でゴリ押せる。ファイズマリード5体とか、『普通なら、震えあがるパーティ』だが、さすがに、魔王の敵じゃない)




