62話 『自分の頭で考える』というのは、実際、疲れる。
62話 『自分の頭で考える』というのは、実際、疲れる。
「日付をまたぐまで、あと、17分か……ちょっと悩みどころだなぁ。今、このタイミングで、転移のワナとか発動されたら、だいぶダルいから……ちょっとうろうろして時間を潰す?」
(んー……ここは、むだに時間を潰すよりも、前に進んだ方がいいと思うけどな。前回は5階で転移のワナにかかって、魔王の目の前まで移動したから、俺達は、『地下迷宮が実際のところ何階層になっているのか』がまだ分かっていない。地下迷宮は『本当は100階層』になっていて、もしかしたら、『前回、転移のワナにかかったのは、逆に運がよかった』……という可能性もなきにしもあらず。もし、そうだった場合、もたもたして時間を潰すのはナンセンス)
「ま、それも、あくまでも可能性の話だけどね」
などと言いつつ、ボクは、とくに時間を潰すことなく、サクサクと5階を探索していく。
基本、モンジンの意見に全乗っかりしていく構えだ。
その方が、うまくいくような気がする。
これも、あくまでも、可能性の話でしかないけれどね。
正直、自分で考えて決断を出すのは、色々な意味で面倒なところがあるから、
自分より賢い人間に、道筋をつけてもらえるなら、それに甘えた方がいい……
というのが、ボクなりの結論。
特に何も考えず、
『パリピーニャは相変わらずカワイイなぁ』
などとニヤニヤするだけの時間を過ごしていると、
……6階へと続く階段を発見した。
現在時刻は23時52分で、『本日の魔王を召喚できるタイムリミット』まで、あと2分32秒ぐらい。
「この感じだったら、まだ下にいっても大丈夫……だよね」
(いちいち、俺に聞かず、ちょっとは自分でも考えてみたらどうだ?)
「だって、ボクが決めたら、怒るじゃないか。『またバカな判断しやがって!』とか言ってさ」
(……『バカな判断をされる』のも困るが、『脳死で他人についていくだけのバカ』になられても困る。そういうバカは、たいがい、とっさのエマージェンシーでパニくるばかりで、使い物にならない。……未来に対し、常に最悪のケースを想定しろ。そして、そのナナメ上をいく絶望にも対応できる心構えを磨け)
「めんどくさいな、この幽霊……」
(俺は、当たり前の事を言っている。お前が消えて喜ぶ者に、お前のオールをまかせるな)
「モンジンって、ボクが消えると喜ぶの?」
(……『消えるのはお前だけで、俺は残る』という前提があるなら、お前には是非消えてもらいたい。これ以上、イライラして血圧を上げたくないから)




