61話 9分55秒もかければ、余裕でクリアできるっしょ。
61話 9分55秒もかければ、余裕でクリアできるっしょ。
その日の夜、ボクは、外周西南西エリア2にあるダンジョン『メラトニンの地下迷宮』にきていた。
エリア2は、小走りで20分ぐらい。そんなに遠くない。
流れとしては前と全く同じ。
礼拝堂の出張所で50万を払い、警備員に、『バカか、お前』とぼろくそに言われた。
この流れを、毎回やるのだろうか、と思うと、正直、少し鬱陶しかった。
ため息をつきつつ、ダンジョン探索を開始。
ダンジョン内の構造とか、出てくる敵のランクとかはほぼ一緒。
だから、前よりもサクサクと進むことができた。
ちなみに、昼間の闘技場では、
相手が距離をとる戦法を取ってきたので、試合時間じたいは長引いたけれど、
ボクは、基本的に、自前のゴブリンを囮に使って、
『ここぞというタイミングでだけ、マパネットに麻痺攻撃をしてもらう』
という戦法を取ったので、実際にマパネットを使った時間は5秒弱。
4分55秒も残っている。
その上で、今日は、前回の反省も踏まえて、『23時』にダンジョン攻略を開始した。
地下5階に行くまで、だいたい1時間ちょっとかかるので、
もし、前回のように、突発的な事故が起きても、すぐに日をまたぐことができる。
うまいこと時間を調節できれば、ダンジョン攻略に使える魔王召喚時間は、最大9分55秒。
この、メラトニンの地下迷宮の難易度が、プロゲステロンの地下迷宮と同じなら、確実に攻略できる。
……と、偉そうに、攻略プランを口にしているところ、なんだけれど、この作戦を考えたのはモンジンで、ボクじゃない。
ボクは普通に、夜の7時ぐらいから挑戦するつもりだった。
「モンジンって、ただの痛い厨二じゃなくて、結構賢いよね」
(言っておくが、俺は相当『頭が悪い方』だ。謙遜じゃなく、マジでな。そして、そんな俺と比較して、相当劣っているのがお前だ。このヤバさ、真剣に受け止めろよ)
「いやいや、モンジンは、かなり頭いいって。自信もってよ。よっ、大統領」
(俺を持ち上げることで、相対的に、自分の知性ランクを上げようとしているところ悪いが、現実は現実として受け止めろ)
「いや、実際のところ、ボク、普通だと思うんだけどなぁ……ガチで、君、相当、賢いと思うよ」
などと対話しているうちに地下5階まできた。
現在時刻は23時43分で、『本日の魔王を召喚できるタイムリミット』まで、あと2分50秒ぐらい。
「5階にくるまでのタイムが、前回よりだいぶ早い感じだね。一度、経験しているから、だいぶサクサク進んでる」




