60話 『できなければ死ぬ』と自分自身に誓え。
60話 『できなければ死ぬ』と自分自身に誓え。
(そいつはホメオスタシスだ。現状維持を強制してくる生命システム。人間の成功や成長を最も阻害する要素。ダイエットが成功しない最大の原因にして、テスト勉強前に部屋の掃除をしてしまう理由)
「難しいことはよく分からないけど……間違いなく、やる気が低下しているよ」
(いいか。そういう時は、腹の底に力を入れろ。そして、スケジュール管理を徹底するんだ。『何時~何時の間はコレをする』と決めて、心に誓え。『やらなければ死ぬ』という血の契約を自分自身と結ぶんだ。そうすりゃ問題ない。そして、最低目標と最高目標を決めるんだ。最低目標は、何があろうと絶対にこなさなければいけないライン。たとえ、40度の高熱であろうとギリギリこなせる程度の難易度に設定する。こうすれば、突発的に何かがあっても――おい、聞いてるか、17番)
「前から思っていたけど……モンジン……君は、暑苦しい」
(あ?)
「なんていうかなぁ……自分にも他人にも厳しいって感じ? なんだよ、血の契約を自分と結ぶって……はは。君のこと、厨二病だなぁとは思っていたけど、さすがに――」
(……俺をバカにするのは自由だが、目の前の現実から逃げるのはやめろ)
「逃げてないだろ。なにも……今日だって、奴隷としての仕事をちゃんとこなしながら、頑張って闘技場で金を稼いできたし、その上で、今夜もダンジョンに挑むつもりなんだよ。成り上がるために、必死に頑張っているじゃないか。どこに、こんなに頑張っている11歳がいるんだよ。……でも、もう大金を稼いでいるし、ポルのオッサンも、あんな感じで、もう別に奴隷の立場が、そこまで苦しくて仕方がないってわけでもないから、今のままでも別にいいかなって、ちょっと思ってしまった……それだけじゃないか。怒られる筋合いはないよ。むしろ褒めてほしいよ。よく頑張っているって」
(……こいつ、腹立つぅ……くそぉ。覚えてないから断定できないけど……もしかしたら、今が一番苦しいかもしれない……)
「なんで、そんなにムカつかれなきゃいけないんだよ……ボク、がんばっているじゃないか……」
(頑張ることなんざ当たり前なんだよ。頑張り続けることは大変だから、その方法を教えてやってんだろうが。茶化していい場面と、そうじゃない場面の違いぐらいつけやがれ)
「血の契約とかボケておいて、茶化すなってのは無理な話じゃない?」
(厨二なのは認めるが、一ミリもボケちゃいねぇよ)
「……ぇ……」




