57話 ラストローズ辺境伯視点(3)
57話 ラストローズ辺境伯視点(3)
7番の実直な意見を聞いた私は、彼女に、
「私も、17番は『ただのバカだ』と思っている。知性の足りない子供……能力の足りない奴隷……」
「本音で言いますが……私としては、『最も怪しいのはセミディアベル公爵だ』と思います。能力、知性、野心、地位。もし、魔王を扱える者がいるとしたら、あの悪魔こそが最適解」
「心で思うであればともかく……不用意に、公爵の影口を叩くのはやめておいた方がいい。どこに、公爵の耳があるか分からない。公爵の手ゴマは多い」
「あと、候補としては、セミディアベル公爵直属配下の一人……ゼンドート伯爵も怪しいですね」
「彼か……」
伯爵の名前を出されたことで、私は、溜息をついてしまう。
ゼンドート伯爵は、『内周西南西区』全体の支配を任されている優秀な貴族。
彼は、間違いなく有能。優れた力を持つ超人。
ただ、彼は……ある意味で、セミディアベル公爵以上に、奇怪な性格の持ち主。
そこで、7番が、
「お望みとあらば、ゼンドート伯爵を調査してまいりますが?」
「やめておいた方がいい……彼は、セミディアベル公爵に気に入られている懐刀だ。変につつくと、公爵と揉めることになりかねない。現状で、そうなるのはまずい。それに……君の実力では、ゼンドート伯爵のセンサーをくぐりぬけられない。伯爵は確かに歪な男だが、その実力は本物だ。どれだけ慎重に隠密行動をとったとしても、すぐにばれてしまうだろう」
「……それでも、『猿の17番』に無駄な時間を使うよりはマシだと思いますが……」
「ゼンドート伯爵に対する探りは私自身が行う。ちょうど、次回の『地下迷宮定期調査』で顔を合わせることになっているからな」
「……それでは、私は、このまま、17番の調査を続行する……ということでよろしいので?」
「申し訳ないが、よろしく頼む。立場の弱い主人で、本当にすまない」
「……頭を下げる必要はありません」
そう言って、7番は17番の調査に戻った。
その後、私は、『針土竜の3番』に連絡を入れて、植物人間になった者たちの様子をうかがい、何も変化がないことを確認する。
そこからは領主としての本業を開始。
任されている範囲が広すぎて、時間がいくらあってもたりない。
正直、最近、まったく寝ていない。
もともと多忙な上で、魔王関連の調査も担って、その上で、セミディアベル公爵から、『嫌がらせのような案件(感染症調査と対策案の提出)』も受けている。
ああ……胃が痛い……
頭が働かない……




