54話 17番と9番だけの秘密。
54話 17番と9番だけの秘密。
(なんにも覚えていないが……俺がかつて組んでいたバディが、『死ぬほど頼もしかった』ということだけは、なんとなく覚えている……そいつのこと、めちゃくちゃ嫌いだったような記憶があるが……でも、バカなお前よりは好きだ……なんだったら、死ぬほど好きだったかもしれない……)
「あ……そうですか……」
などと、無駄な会話をしていると、家についた。
ポルのオッサンは、相変わらずおとなしいまま。
ボクの顔を見ても、特に何も言わない。
昔だったら、ちょっとでも遅く帰ってきたら、絶対に殴られていたけど。
ボクは、オッサンに『ただいま帰りました』と挨拶だけして、馬小屋の寝床に向かう。
すでに9番が寝支度をして待っていた。
ボクにガシっと抱き着いてきて、
「先輩、ダンジョン、どうでした?」
と、ニコニコで聞いてきた。
この抱き着かれるのにも、もう慣れた。
ボクは、ほとんど条件反射的に、9番の頭をなでながら、
「うまくいったよ。クリアできた」
「本当ですか?! ダンジョンって1000年間、誰もクリアできなかったんですよね?! それを、先輩は、一人でクリアしちゃったんですか?!」
「まぁな。……言うまでもないが、誰にも言うな。どうせ、誰も信じないとは思うが……」
「ですね。僕以外、誰も信じないと思います」
ニッコニコでそんなことを言う9番。
守りたい、この笑顔……と、本気で思わしてくる、魅惑のミラクル美少女っぷり。
だが……男だ……
まあ、いまさら、そんなもん、どっちでもいいことだが……
と、心の中で、一つの諦めの境地に立ってから、ボクは、9番に、
「明日からも、出来る限り、行けるときはダンジョンにいって、お宝を手に入れようと思っている。手に入ったお宝しだいでは、すぐにでも……ボクらは平民に上がれるだろう」
「ダンジョンって、クリアしたら、お宝が手に入るんですか?」
「ああ、そっか。そこから説明しないとな。ほら」
そう言いながら、ボクは、神眼モノクルを取り出して、9番に見せる。
「凝った装飾品のモノクルですね……え、これがダンジョンのお宝ですか?」
「ああ。これは……プロパティアイって魔法が使えるようになる神器だ」
「プロパティアイ……へぇ。すごいですね」
「え、お前、プロパティアイ、知ってんの?」
「ぇ……ぁあ、いえ、知りません。分からなかったから、テキトーに流しました。僕、そういうところがあるんですよ」
「わからなくもない……ボクも、似たような感じのことをよくする」
「あはは」
「あはは」




