52話 ダンジョンクリア!
52話 ダンジョンクリア!
「ところで……どうやって帰ろうか……」
期待と不安を一旦抑え込んで、ボクは、帰還手段を模索し始める。
封鎖された広い空間。
階段も扉も何もない。
「え、一生ここから出られないとか……そんなオチはないよね?」
と、不安になっていると、
近くの地面の一部、直径1メートル分ぐらいが、パァっと淡く光り出した。
「え、まさかの、本当にゼ〇ダ式?!」
ビビりながらも、ボクは、その『淡い光』の上に立ってみた。
すると、転移のワナにかかった時とほぼ同じ感じで、
ヒュイン!!
と、体全体を包み込む、妙な気配と跳躍の波動。
あの時と同じく、視界が一瞬真っ白になった。
★
ほんの一瞬で視界が戻る。
「ん……んん……このくらくらするの、ウザいなぁ……転移システムさんには、その辺の改善を要求したいところ……」
などと文句を言いつつ、頭をおさえて、周囲を見渡す。
すると、背後に階段があった。
軽く警戒しつつ、ボクは階段を上がってみる。
そうしたら、何事もなく、無事、外に出ることができた。
「クリアすると、ワープゾーンが出て、入り口に戻れるのか……」
(まさか、俺がテキトーに言ったことが現実になるとは……もしかしたら、俺はどこかの長っ鼻狙撃手みたいに、『ついた嘘が現実になるなるの実の能力者』なのかもしれん)
「あの長っ鼻は悪魔の能力者じゃなかった思うけど……」
などとくだらない会話をしていると、
「おっ、なんだ、お前、結局、ビビって帰ってきたのか。まあ、それが懸命ってもんだ。しかし、だからって50万が帰ってくるわけじゃないからな」
30代後半のオッサン警備員が、そんな風に声をかけてきた。
どうやら、ボクが、しっぽを巻いて逃げ帰ったと思っている様子。
ふ……青いな。
「ナメないでいただきたい。俺はビビって逃げてきたわけじゃなく、無事にクリアして帰還してきたんですよ」
「クリアしてきた……ねぇ……」
「はい、その通り。……いやぁ、ダンジョンは本当に大変な場所だった」
ボクは両手の拳をグっと強く握り締め、その場で、シャドーボクシングをしながら、
「迫り来る強大なモンスターを、ボクはバッタバッタと薙ぎ倒し、どうにか最終フロアまでたどり着いたボクは、そこで強大な『邪悪の化身』と出会った。耐久型のカウンタータイプで、削り切るのに時間がかかると思いきや、ボクはあえて――」
「わかった、わかった。そういう信憑性ゼロのウソはいいから、さっさと帰還報告書にサインしろ」