48話 強者との死闘に明け暮れた者の狡猾さ。
48話 強者との死闘に明け暮れた者の狡猾さ。
パリピーニャとダンジョン魔王の闘いを見ながら、ボクの中にいるモンジンが冷静に場を分析している。
(……パリピーニャは、あえて、序盤に『粗い物理特攻』をしかけることで、相手の心にワナを張った。……『これは長期戦になる』……と、戦闘素人のお前でも分かるレベルの空気感を一気に創り上げた。このゲームメイク技術……俺に通ずるものがあるような気がしないでもない、知らんけど)
「だからぁああ! バカにもわかるように言えってぇええ! 言っちゃ悪いけど、モンジンの言うことは、基本、ずっと、わかんないんだよぉおお!」
(感覚的に分かること。……おそらく、俺も、記憶をなくす前は、そういう戦法を頻繁に使っていたんだと思う。記憶はないが、魂魄には刻み込まれている感覚。自分より強い者とばかり戦ってきた……そんな感覚が、『脳』ではなく『体』に染みついている。そんな俺が積み重ねてきた『狡猾さ』を……パリピーニャは学習したんじゃないだろうか……という予測。あくまでも予測だ。前提も結論も、全部、『そうなんじゃないかな?』という、根拠薄の予想に過ぎない。別に教えたわけでも、俺の闘いを見たわけでもないのに、なんで、学習できるんだっていう疑問も残る……まあ、その点に関しては、感覚トレースってのもあるから……いや、とはいえ……)
モンジンが、『さっぱり理解できないこと』をブツブツ言っている間に、
残り時間は10秒を切っていた。
ボクは失神しそうだった。
このタイムリミットは、ボクの寿命とリンクしている。
とんでもない恐怖。
明確に死の恐怖を前にして呼吸があらくなる。
ダンジョンなんか来なければ良かった……という、言うまでもない後悔だけが頭の中を埋め尽くす。
死に際はスローモーションになるというけど、あれは、マジだ。
時間の感覚が伸びていくのが毛穴レベルで理解できた。
ああ……終わる……
と、ボクが泡を吹いて倒れそうになったところで、
……『パリピーニャの動き』が変わった。
ここまで、早すぎて『ほとんど』見えなかったけれど……
急に『まったく見えない』という次元の速度になる。
パリピーニャはグンと急激に加速して、
ダンジョン魔王の懐に踏み込んでいった。
そして、ズバァアアアアっと、魔王の首を斬り飛ばしてみせた。
鮮血が空間を染め上げていく。
(おそろしく早い抜刀術……俺でなきゃ見逃しちゃうね)
とモンジンが、『わかったようなセリフ』を口にした。




