45話 たぶん、最終フロア。
45話 たぶん、最終フロア。
慎重に、ボクは扉を開く。
扉の向こうには地下へと降りる階段があった。
「地下6階に進む階段……かな?」
(一回、転移をはさんでいるから、絶対にそうとは言い切れないな。もしかしたら、ここは999階で、下は1000階かもしれない)
「仮にそうだとしても、一本道だから引き返すこともできないね。『戻る』っていう選択肢がなくなったの、きついなぁ。……てか、あれ? 仮にだよ。仮に、ダンジョンをクリアできたとして……どうやって帰ればいいんだろう……今のところ、上にあがる手段がないんだけど」
(定石だと、ボスを倒した時に、ハートの器と、地上に帰れるワープゾーンが出てくるんだが……)
「え、異世界のダンジョンって、そんな、ゼ〇ダ式なの?」
(んなわけねぇだろうが、ボケェ。冗談とシリアスの区別もつけられんのか、貴様はぁ。マジで空気のよめないカスだなぁ)
「……こんな状況で冗談を口にするほうが、よっぽど空気よめてないと思うけど……」
などと、モンジンに対する真っ当な文句を口に、ボクは、階段を下りていく。
★
下のフロアに辿り着くと、そこは、上とほぼ同じ構造をしていた。
広さは、体育館サイズ。
ただ、一つだけ明確に違う点があった。
それは、
「ア、アレ……もしかして……魔王?」
この広いフロアのど真ん中に、まがまがしい玉座が設置されており、
そこに、『異常に禍々しいオーラ』を放っている怪物が鎮座していた。
人型で、けれど、明確に人ではない姿。
ツノと翼とシッポが生えていて、魔界の貴族みたいな恰好をしている。
あの姿……見覚えがありまくる。
結界の外を闊歩している魔王たちと……そっくり。
その怪物は、優雅に、玉座に腰をかけたまま、何も言わず、ジっとこちらを睨んでいる。
――ボクの中にいるモンジンが、軽く震え声で、
(ぁ、ああ……間違いねぇ。あれは魔王だ。存在値500の化物……)
「マジかぁ……この展開は予想していなかった……まさか、魔王がいるなんて……」
(……俺は多少、予想していたが……こんな最悪の状況で、その最悪の予想が的中するとは、流石に思っていなかったな……)
「ど、どうしよう……パリピーニャを召喚できる時間は……もう2分30秒ぐらいしかないのに……ど、同格の魔王相手に、2分で勝てる?」
ボクは、みっともなくブルブルと震えてしまう。
正直、『ボス』がいるにしても、ここまでの流れをみるに、『存在値200ぐらいが精々だろう』なんて思っていた。




