43話 お前、怖い。モンスターよりもお前が怖い。
43話 お前、怖い。モンスターよりもお前が怖い。
ボクのまぬけな返事を聞いて、モンジンがすごく呆れているのが伝わってくる。
(なんか、ためらわず、かえりみず、ふりかえらず、ほうけた脳死ヅラで、どんどん先に進んでいくなぁとは思っていたが……まさか、マジで頭をまったく使っていなかったとは……逆に恐れ入るぜ)
「……お、怒らないでよ。しょうがないだろ、考えるのが苦手なんだから。ボクは、本当に頭が悪いんだ。……そ、それに、別に、『帰りの方が、時間がかかる』ってのも、絶対の可能性ってわけじゃないじゃん。あくまでも、最悪のケースってだけの話だろ?」
(……まあ、いいや。……とりあえず、引き返せ。お前、怖い。モンスターよりもお前が怖い。『偉大なる英雄の擬人化』と言われていたかもしれない俺を、ここまでビビらせるとは大したやつだ。お前は誇っていい。自分のゴミっぷりを)
「……偉大なる英雄は、人のことを、そんなにけなさないと思う」
ちょっとした文句を口にしてから、
ボクは、モンジンの意見にしたがい、きびすを返した……その時だった。
ヒュイン!!
と、体全体を包み込む、妙な気配と跳躍の波動。
「え、ええ?! なになに?! うわわわわっ」
(最悪……転移のワナだ……マジかよ、くそが……。もう、マジで最悪……)
モンジンの心底しんどそうな声の直後、ボクの視界が一瞬真っ白になった。
★
ほんの一瞬で視界が戻る。
「ん……んん……ちょっと、くらくらするな……」
転移した場所は、周囲を見渡した感じ、同じダンジョン内部。
構造とか色味とかはまったく同じ。
体育館ぐらいのかなり広いサイズで、出入り口とか、外部通じる通路みたいなものは見当たらない。
どういう状況だろうと困惑していると、ボクの中にいるモンジンが、ボソっと、
(17番……マジで気合い入れろよ、ここから本当の地獄だ……たぶん。知らんけど)
いつものように軽口を言っているけど、ボクには分かる。
モンジンは、結構、マジで焦っている。
(くそったれ……俺だったら……たぶん、どうとでもなるのに、知らんけど。なんで、こんなカスに、命運をたくさないといけないんだ、くそったれ。俺だったら、どんな絶望を前にしても乗り越えられる気がするのに……知らんけど……ああ、歯がゆい……)
ブツブツと何か言っている。
正直、鬱陶しい。
などと思っていると、そこで、目の前に、一気に複数のモンスターが召喚された。
全部で5体。
どいつもこいつも非常に強そうで、バキバキの殺気を僕に向けて放っている。




