38話 モンスターは物質だ。
38話 モンスターは物質だ。
『殺すぐらいだったら死んだ方がマシ』……なんて極端なことは思わないけれど、例えば、交通事故なんかでいうと、『子供数人を巻き込んでの事故』とかを起こすぐらいだったら、自分が轢かれる側の方がまだマシだと考えてしまう……ってことは普通に誰でもありえることだと思う。
『何人殺してもいいから、とにかく自分だけは助かりたい』と考える人もいるにはいるだろうけど、ボクは、その考え方に抵抗感がある……それだけの話。
ボクが善人だから……とかそういうことではなく、シンプルに、チキンだから……
……などと、そんな風に、うだうだと悩んでいると、
そこで、モンジンが、
(モンスターは、物質だ。虚理生命は純粋生命とは違う。破壊されることが前提であり、無限に再生し続ける。だからって、遊びで拷問したりするのは違うと思うが、奴らは、『純粋生命体の命を奪うこと』を目的として行動し、『純粋生命体の糧になること』を存在理由にしているから、むしろ『倒す』ことからは逃げない方がいい。虚理生命の魂魄を回収することで、純粋生命の質量が底上げされる。その流れは結果として、世界の寿命と質を高め、虚理生命の質向上にもつながる)
「ごめん。ちょっと言っていることが難しすぎるよ……」
(動物を食って生きて、クソして、そのクソが肥料や薬になって、動物のエサが育ち寿命が延びる……みたいなサイクルをイメージしていればいい。人間がモンスターを倒すことは、モンスター側にとってもメリットがあるんだ。世界はそういう風に出来ている。お前が生きることは、世界の循環のために必要なこと。『生きること』に『意味』は存在する)
「……よくわからないけど……まあいいか……」
そこで、ボクは腹を決めて、
「ゴブリン……そのホブゴブリンを殺してくれ」
正式に命令を出した。
すると、ゴブリンは、なんの抵抗感もなく、
握りしめた拳を、麻痺っているホブゴブリンの顔面に、
何度も、何度も、何度も、たたきつける。
ホブゴブリンは、マパネットの攻撃で死にかけているが、
耐久がそれなりに高いのと、
ゴブリンの火力がなさすぎるので、
殺し切るのに、なかなか時間がかかった。
ゴブリンが、何度も、何度も、何度も、殴りつけたことで、
ホブゴブリンは、ようやく息絶えた。
そして、光の粒子となって、ボクの中へと注がれていく。
「よっしゃぁああ! 念願の経験値を手に入れたぞ! ここからボクの伝説が始まる! ようやく始まるんだ、ボクの時代が!」




