36話 キシャ。
36話 キシャ。
まっすぐ、道なりに歩いていくと、突き当りにブチ当たった。
右、左……どっちに進むか、悩みどころ。
「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な――」
テキトーに神様を頼って道を選択する。
そんな風にして、奥へ奥へと進んでいく。
その途中で、
「ぉっ」
地面にジオメトリが描かれた。
一度淡く光り輝くと、そのジオメトリから、
「キシャァ」
モンスターが出現した。
そのモンスターを見て、モンジンが、
(おっ、闘鬼か……まあまあのモンスターが出てくるじゃないか)
「え、知ってるの?」
(存在値50ぐらいの鬼だな)
「そういうのは覚えているんだね」
(モンスターの種類は……まあまあいけそうだ。鬼種で言えば、一番弱いのが小鬼で、一番上が『禍羅魅神鬼』だな。あと、覇鬼とか、ヘルズ覇鬼とかいるな)
モンスターには詳しいのか……
言っていることが本当かどうか分からないから、まだ断定はできないけど、
もしかしたら、モンジンは、『ただの厨二病患者』ではないかもしれない。
……なんて、そんなことを考えていると、
闘鬼が、
「キシャ!」
と雄たけびをあげながら、襲い掛かってきた。
存在値50の鬼……それが本当なら、
こいつは、ウルベ卿とだいたい同じぐらいってこと。
ボクの力では絶対に勝てないが……
「――よろしく、パリピーニャ」
事前打ち合わせ通り、
合図と同時に、パリピーニャが召喚される。
そして、出現すると同時、
サッカーのエースストライカーみたいな豪快なフォームで、
ズッパァアアアアアン!!
と、闘鬼の頭を蹴り飛ばしてみせた。
一瞬で蒸発するように爆散した、闘鬼の頭。
闘鬼が死んだのを確認することなく、パリピーニャは、そのまま、スゥっと消えていく。
この間、およそ2秒。
想定通り、パリピーニャを使えば、悪名高い地下迷宮のモンスターも秒殺できる。
残り4分58秒……
パリピーニャが消えてから、頭を失った闘鬼の身体が、ズシャっと倒れて、そのまま淡い光となり、ボクの中へと注がれていく。
「これは……経験値を獲得したってことでいいのかな?」
(ああ、本来はな。けど……)
「けど……なに?」
(お前じゃなく、パリピーニャに経験値が入ったな……)
「マジで? ぁあ……それは、ちょっと面白くないな。できれば、ボク自身に経験値を取り込んでレベルをあげたいところ……」
(お前自身がトドメを刺さないと、それは無理だな)
「ふぅむ……なるほど。トドメ……トドメかぁ……んー、ちょっとイヤだけど、仕方ないかぁ……」