35話 ボク、このダンジョン探索が終わったら、結婚するんだ。
35話 ボク、このダンジョン探索が終わったら、結婚するんだ。
「相手の存在値が正確に分かるなんて、なかなかの才能をお持ちですね。こんな辺境でダンジョンの警備員なんてやらず、もっと上を目指したらどうです?」
「別に正確に見えるわけじゃない。ただの感覚だ。9ぐらいに見えたってだけ」
……なんだ……ようするには山勘が当たっただけか。しょうもない。
ボクは転生前、トンカツ屋でバイトをしていたのだが、
熟練の『カット(揚がったトンカツを切る人)』は、
『量り』を使わずとも、手で持つだけで、豚肉のグラム数がほぼ正確にわかっていた。
……ようするには、それと同じってことだろう。
「仮に、相手の存在値が正確に分かる目をもっていたとしても、それだけじゃ、そうそう出世なんかできないだろうが」
と、言われて、ボクは考えてみた。
……まあ、確かにそうだ。
「そんなことより、お前……本気でダンジョンに挑むつもりか?」
「冗談で、50万を払ったりしませんよ。50万の価値、知ってます? なんと、50万ユウガぶんのモノを購入できるんですよ!」
「……」
「全力でボケたんだから、ちょっとは笑ってほしかったですね」
「……死ぬぞ、確実に」
「死なないように、頑張ります」
「……はぁ……」
と、オッサン警備員は、深いため息をついてから、
『通行証に書かれている登録ナンバー』を、『机の上の書類』に記載して、
「名前は?」
「猿の17番」
ボクの名前とか、現在時刻とかを記入し、
「……遺言があるなら、聞いておくが?」
「ボク、このダンジョン探索が終わったら、結婚するんだ」
「……」
「……今の、結構、面白い冗談なんですけどねぇ……死亡フラグを遺言にするっていう、なにがなんだか分からない感じが……面白いといいますか……」
ははっと、乾いた笑い声をあげるボクに、
「入り口は、そこの奥のドアを抜けた先の階段だ。死体は回収しない。じゃあな、自殺ジャンキー」
「どーも」
そう言いながら、ボクは、先へと進む。
ドアを抜けて、奥のフロアに進むと、床に『地下へと続くデカい階段』があった。
「ふふ……ふふふ……」
期待と不安が入り混じる。
ここから、ボクの本当の異世界生活が幕をあける。
長いプロローグだったな……
「さぁ……行こうか……」
★
50~60段ぐらいの、まあまあ深い階段を下りて『地下迷宮の地下1階』に辿り着いた。
コケの生えた石造りの、いかにもダンジョンという感じの構造。
なんの光か分からないけれど、奥まで見渡せるぐらい、しっかりと全体が照らされている。




