31話 ラストローズ辺境伯視点(6)
31話 ラストローズ辺境伯視点(6)
「私としては、そちらの推論の方が、遥かに合理的であるように思うのだが……君はどうかな?」
「確かに……魔王を召喚できるだけの力があるのであれば……誰かに罪をなすりつけることも……簡単かもしれません……」
反論の余地がない。
もちろん、『無能がたまたま魔王使いの力を得て、何も考えずに、自分の利益のために力を使いまくっているだけ』という可能性もゼロではないが……
どちらの推論の方が、『より合理的か』と言えば、
間違いなく、セミディアベル公爵の推論の方が……
「ラストローズくん……その奴隷は、優れた力、あるいは賢い頭脳をもっているかね? 魔王を召喚できるような、特別な素養をもっているのかね?」
「直接話してみた印象では……知性も力も……何も持ち合わせていない、ただの奴隷に思えました」
「なるほど。となると、現時点で最も怪しいのは……『その奴隷に、なにがなんでも罪をなすりつけよう』と躍起になっているようにしか見えない『極めて有能な頭脳と力を持つ君』ということになるね」
「ば、ばかな! わ、私は!」
「落ち着きたまえ、ラストローズ辺境伯殿。ただの推論だよ。……『ただの推論では、現実はつかめない』という、良い証拠、良い教訓になったね。『証拠はないけど、なんだかとっても怪しい気がする』……というだけなら、誰に対してでも言えるのだ。私から言わせれば、魔王に襲われたと供述しているポルとかいう平民も怪しいな。自作自演しているのではないかね? 自ら魔王を召喚し、自らの局部を切り落とさせる。こうすれば、疑いの目がかからない……と画策したかもしれない」
その可能性は、確かに、十分にある。
ポルは17番の飼い主だから、17番が利益を得ることは、結果的に、ポルの利益につながる。
追跡調査によれば、S1奴隷に昇格した17番は、ポルと交渉し、100万を払うことで、週休二日制の権利を獲得したという。
闘技場やギャンブルの金は、飼い主の懐に入らない……が、そういう形で利益を得ることは実際にできているのだ。
それが全て計算によるものだとしたら……
怪しまれないために、あえて迂遠な手段で利益を得ているのだとしたら……
「状況証拠だけで犯人を決めつけるというのは、そういうことだよ、ラストローズくん。大事なのは確たる証拠だ。それがないうちは、思考に柔軟性と制限をもたせるべきだ」
「……おっしゃるとおりです。現状、確かに……確たる証拠は何もありません……」




