23話 痕跡。
23話 痕跡。
モンジンのおかげで、人生に希望を見いだせたんだから、なるべく良くしてあげたい。
恩義には恩義で返すのがボクの流儀だ。
(それはそうと、17番……お前、けっこう危ないぞ)
「危ない? なにが?」
(お前の中で、ずっと、お前の行動や状況を観察していたが……ぶっちゃけ、お前、だいぶ『痕跡』を残しながら行動しているからな。マジで、本気で注意しろよ。……前にも言ったが……周囲の連中に『魔王を召喚しているのは、猿の17番だ』ってバレたら終わりだからな)
「わ、わかっているよ。だから、昨日も、ロングコートにフードをかぶって、51番の事務所に行ったんじゃないか」
(そんなもんじゃなく、もっと徹底的に注意を払え。いまさら言っても仕方ないことだから黙っていたが……9番にバラしたのは、完全に悪手だ。悪手っていうか、自殺行為だな。もっと言えば、害悪行為だ。お前の安易な行動のせいで、9番は、お前の共犯者になった。お前が処刑されるときは、9番も処刑されると思えよ)
「……わかっているよ……だから、詳細は何も伝えていないんだ……」
(9番のお前に対する態度を鑑みるに、現状の9番が安易に周囲にバラすってことはないだろう。むしろ、積極的に、お前の秘密を守ってくれるだろうぜ。だが、将来的に、拷問されて口を開くって可能性はゼロじゃないし、お前に対する感情が反転アンチ化して、全力でお前を貶めようとしてくるって可能性もゼロじゃない。人間関係なんか、いつ、どこで、どうなるか分からない。だから、『本当の秘密』は『絶対に誰にもバラさない』ってのが、『人生』の鉄則なんだ。……『墓場までもっていくと決めた秘密』は、たとえ、相手が親だろうが、嫁だろうが、子供だろうが、配下だろうが、関係なく、ちゃんと墓場まで持っていけ)
「……わかってる……わかっているよ」
(もし、この世界に、『見た目は子供、頭脳は大人』みたいな死神探偵がいたら、お前は終わりだぜ。せいぜい、『この世界の名探偵役が無能であること』を神に祈るんだな)
「……」
(なんだよ)
「……いや……あの……それ、何?」
(なにって?)
「だから、その……死神探偵ってなに?」
(なんか頭に浮かんだ言葉をテキトーに口にしただけだ。今後も、そういうことが頻繁にあると思うから、雑に流せ。正直、俺も、自分が何言ってるか分かってねぇよ)
「……あ、そう」
(んなどうでもいいことより、マジで気をつけろよ。お前が殺されたら、俺も多分終わりだから)




