22話 17番に『下地』がないと、身動きのしようがないから。
22話 17番に『下地』がないと、身動きのしようがないから。
……アッサリと帰ってくれた『アネゴ』……
『針土竜の3番』の背中が見えなくなったところで、
それまで黙っていた9番が、ボクに話しかけてくる。
「先輩……大丈夫……ですかね?」
「うまくごまかせたから、大丈夫だろう。昨日、ボクが、魔王組の事務所でやったことは、とても『ボクみたいなクソ奴隷』にできることじゃないから、本気でボクを怪しむことはないよ。……たぶん、きっと、おそらく」
ちなみに、ボクは、9番に、『詳細』は一切話していない。
今回の件だけじゃなく、今後もずっと、『魔王関連のアレコレ』を9番に教える気はない。
9番は、何も知らない。
単なる、ボクの知り合い。
同じ職場で働いている、ただの同僚。
……それでいい。
★
その日の夜、
9番が寝付いてから、
ボクはいつものように残業を開始する。
今日から本格的に、魔王を使って成り上がっていく。
やりたいことはたくさんある。
その中でも、最優先で選択すべき道は――
――みたいな感じで『ワクワクな皮算用』をしていると、
そこで、モンジンが、話しかけてきた。
(17番……しばらく、俺は何も言わない。お前の好きにさせてやる。……お前に『下地』がないと、身動きのしようがないからな)
「下地……」
(最終的に、お前には、『俺がなくした全てを取り戻すための協力』をしてもらうが……今のお前の状況で、それをしようとしても、何もできないだろうから、いったん、お前には身分なり、力なり、金なり、人脈なり、家なり……『この都市内部で動きやすくするための下地』を作ってもらう)
「ボクの出世は、君にとっても都合がいいこと……というか、必須事項って感じか」
(そうだ。『奴隷』と『公爵』じゃあ、使える金・動かせる人員・行使できる権力・その他もろもろ、あらゆる点で桁違い。だから、俺は、『お前が出世するための協力』を惜しまない。俺自身のためにも、全力でお前のサポートをしてやる。よって、これまで通り、今後も、ずっと、お前が望む通りに魔王を召喚してやる。ありがてぇだろ)
「正直、めちゃくちゃありがたいね」
(そのかわり、『下地』を手に入れたら、絶対に、俺に協力しろよ。約束を破ったら、マジで殺すからな)
「わかっているよ」
何もできない火の玉の状態で、どうやってボクを殺すのか分からないけど……だからって無為に裏切る気はない。
協力してもらった分のお返しはさせてもらうつもりだ。




