20話 植物人間ウイルスをばらまいた犯人。
20話 植物人間ウイルスをばらまいた犯人。
「猿の17番は、ボクですねぇ。え、もしかして、ボクに何か御用で? ……また、ボク、何かやっちゃいました?」
「少し話を聴きたい」
「話……ですか……な、なんでしょう……」
「その前に、かるく自己紹介しておこうか。あたしは『針土竜の3番』。後ろにいるコイツは、『猿の98番』。どちらも魔王組の人間だ」
「……魔王組の? ……あなたは、ウルベ卿の従者ではないんですか?」
「使い勝手のいい奴隷は、あっちこっちでこき使われるんだ」
「……た、大変ですね……ボクは無能で使い勝手が悪いので、一か所で楽させてもらってます。今日も休日で、朝から寝てまして……へへへ」
「……『休日』か…………もう何年も、休んだことなどないな……」
3番は、遠くをみながら、ボソっとつぶやき、
「さっそく本題に入るが……あんた、昨日の午前中に、魔王組の構成員『鴉の51番』と事務所で会う約束をしていなかったか?」
おっと……
なんで知っているんだろう。
あのクソチンピラ、もしかして、どこかに記録でも残していたのだろうか。
そんな繊細なヤツには見えなかったけど……
それとも、『あの場にいた構成員以外の誰か』に、『昨日ボクと会うこと』を話していたのだろうか?
……んー、厄介だな。
『植物人間ウイルスをばらまいた犯人』が『ボクだ』とバレる訳にはいかない。
なんとかごまかそう。
大丈夫。
下手を打たない限り、ボクだとバレることはない。
あんなイカれたマネ、ボクみたいなカス奴隷にできることじゃないんだから。
『身分が低くて得すること』なんて基本何もないけれど、この時ばかりは、ボクの『しょぼさ』が最上級の隠れ蓑になってくれる。
ボクは、コホンとセキをはさんでから、
「あ、はい。約束しておりました。51番から『ケツモチになってやるから金もってこい』って言われまして……金をもっていきましたが、事務所のドアをノックしても、誰も出てこなかったので、そのまま帰りました。また後日、うかがおうかと思っていたのですが……」
「ほう」
「それがなにか? もしかして、取り立てですか? ボク、昨日、ちゃんと事務所に行ったので、もし『約束を反故にした分の利子を追加で払え』とか言われても困るというか、それは流石に理不尽といいますか……」
「そんなことを言うつもりはない」
と、最初にキッパリと断言してから、
「話を聞きたいだけだ。昨日、あんたが事務所に行った時、なにか、おかしなことはなかったか? 妙なやつとすれ違ったとか」




