96話 絶対に本物の冒険の書。
96話 絶対に本物の冒険の書。
「この人、さっきから、なんか、すげぇ幻滅してくるんですけど……別にいいけど、なんだかちょっぴり不愉快」
「センくん、君は完璧でなきゃいけない。完璧じゃない君は君じゃない。ちゃんと俺の理想通りの完璧な英雄でいてくれないと……殺すよ、センくん」
「メンヘラ反転アンチェ」
恐怖を帯びた顔でそうつぶやいてから、
「ちなみに、俺が完璧だったら、殺さないでいてくれるの?」
「完璧な君を殺すことが俺の、たった一つの生きる目的だよ」
「どうあがいても、絶対に殺される……っ」
蝉原と、無意味なおしゃべりをしている間に、
どうやら、センの中で、『ここから先の指針』が固まったようで、
「……よし、決めた」
「なにをだい?」
「お前からもらった冒険の書を使って、真・第一アルファに行く。そして、過去の俺に助けてもらう。お前が『理想』と呼ぶほどの『完璧な英雄』なら、無能な俺と違って、この絶望をどうにかしてくれるはず!」
「他力本願なのか自分本位なのか、よくわからない発言だね。……ちなみに、さっきあげた冒険の書は本物だよ」
「本物なわけねぇだろ。俺、まだ3次試験の途中だったんだから。ちゃんと最終試験までクリアしないと本物を貰えないのは、痛いほど理解している」
「本当だよ。俺、嘘つかないよ」
「確定したじゃねぇか。嘘つき村の大将が、嘘じゃないって断言しちゃったら、もう終わりだよ」
★
蝉原と、テキトーなおしゃべりをしつつ、
禁域に向かったセン。
南大陸の南方。
深い、深い森の果て。
ドーム状の黒い霧で覆われている妙な場所。
サクっと中に足を踏み入れると、
そこは、見慣れた摩天楼。
人は誰もいない。
無音が耳に痛い。
数え切れないほどの超高層ビルが立ち並んでいる、いつ見ても不気味な光景。
センと蝉原は、ビル群を抜けて、
禁域の扉があるとこまで一直線。
「いつきても、キモい雰囲気に包まれてやがるねぇ、この場所は……」
スクランブル交差点のちょうどど真ん中にそびえたつ巨大な扉。
放物線形の門扉には『精緻な銀河』が象られ、
門扉の真上には、『星にからみついた龍』のシンボルがある。
センはアイテムボックスに手を伸ばし、
蝉原からもらった『冒険の書』を手に取ると、
蝉原の方に視線を向けて、
「……お前もついてくるの?」
「もちろん、俺達は一心同体。ほぼ双子といってもいい、運命のバディ。君と俺が離れ離れになる日は絶対に訪れない。俺たちの友情は永久に不滅です」
「……よくも、それだけ、心にもないことを、ツラツラと口にできるもんだな……ファントムトーカーの俺が、お前の言葉の『あまりの意味のなさ』に、ビビって震えているぜ」




