95話 幻滅だなぁ。
95話 幻滅だなぁ。
「トウシはこの世で一番の天才。それは間違いない。けど、君と比べたら、まだ常識の範疇にいる。今の俺なら殺せるよ」
「……」
「まあ、『まだ死に切っていないカケラの状態で、復活の方法を探している』という可能性もゼロじゃないけどね。……『田中トウシは俺の想像を超えたことをしてくる』というのも事実だから、どっかで、復活してくる可能性は、ゼロじゃない。それは認める」
「……」
「トウシが何かしらのウルトラCをかまして復活してくるのを待つかい?」
「ただジっと待つってのは性に合わないねぇ……俺は、信号を待つことすら嫌いなんだ。第一アルファで生活していたころは、よく、信号無視していたぜ」
「全世界壱のウルトラミラクルスーパーヒーローともあろう者が、交通違反を犯していいと思っているのかい? 幻滅だなぁ」
「好きなだけ幻滅してくれ。お前の理想に寄せる気はないから。……見晴らしのいい交差点で、車もバイクも自転車も一台も通ってない状態で、悠長に待ってなんかいられるか。そういう時は、率先して信号無視するに決まってんだろ。気が短くてコスパを愛している俺の人生観をナメんなよ」
「そんなんだからトラックにひかれるんだよ」
「あのトラックは、赤信号で止まっていた俺に突っ込んできたんだ。むしろ、信号無視をしていれば、俺は死なずに済んだ」
などと、一通りお喋りしたところで、
センが、タメ息交じりに、天を仰ぎ、
「さて……マジで、どうするかな。蝉原、なにか、いいアイディアないか?」
「俺は君の邪魔をしないけど、助けもしないよ」
「いい距離感だねぇ。友達になれそうだ」
「俺と君は友達だよ」
「ナメんじゃねぇよ。てめぇと友達になるぐらいだったら、滅んだ世界で孤独に生きる方がまだマシだ」
「俺と友達になってくれたら、この滅んだ世界を元に戻してあげるけど、どうする?」
「……マジっすか?!」
「もちろん、嘘だけれどね」
「知ってた」
「これはあくまでも思考クイズだけれど、今の俺が出した条件がガチだったら、君は実際、どうする?」
「涙を呑んで、お前の友達になるさ。当然だろ。そして、世界を元に戻してもらったあとで絶交するさ。当然だろ。たとえ絶交しても、俺の『まっさらだったフレンド履歴』に『消えない汚点』が残ってしまうが、それは、まあ、仕方ない。涙を呑んで屈辱に耐えるさ」
「では、永遠に友達でい続けることを条件にしようか」
「てめぇと永遠の友達になるぐらいだったら、滅んだ世界で孤独に生きる方がギリマシだ」
「ヒーローにあるまじき発言だねぇ。幻滅だよ」
「この人、さっきから、なんか、すげぇ幻滅してくるんですけど……別にいいけど、なんだかちょっぴり不愉快」




