94話 マジで誰もいない世界。
94話 マジで誰もいない世界。
「さあ、まずはどうする、センくん」
ニコニコ微笑みながら、そんなことを言ってくる蝉原に、
センは、
「……もしかしてだけど……お前、ついてくる感じ?」
「うん。君が、この絶望とどう向き合うのか、後ろから観察させてもらうよ。別に邪魔とかはしないから安心して。手助けもしないから『いてくれて助かった』とは思わないだろうけどね。あ、でも、他に誰もいない孤独な世界で、話し相手がいるっていうのは、それだけで、助かったと思ってしまうかな」
「俺、こういう時は、独りで悩んだり探索したいから、正直、いるだけで邪魔」
「変わってるねぇ、君って男は」
「お前ほどじゃねぇよ」
「いやぁ、君の方が変人だよ」
「またまた御謙遜を。お前の方が上だよ」
「いやいや」
「いやいやいや」
★
とりあえず、センは、サクっと、世界を一周してみた。
ものの見事に、全ての生命が死滅している。
「動物も虫もいねぇ……もしかして、微生物とかも殺してる?」
「なるべく殺すように頑張ったけど、まだちょっとは残っているかもね」
「……なぜ、そんなにも執拗に……その根気と集中力を、支配の方に回せば、確実に、世界が良くなるのに……全員が豊かで幸せな世界を実現できるのに……」
「全員が豊かだと、世界はうまく回らないらしいよ。世界運営において、もっとも効率がいいのは、庶民が『ほどほどに貧乏であること』らしいからね。全員が豊かだと、ハングリー精神が損なわれるし、豊かさをはき違えるやつも出てくる」
「第二~第九アルファは、全員、そこそこ豊かだったぜ。それでも、ちゃんと回っていた」
「それは、君が全部を分け与えていたからじゃないか。君が無茶苦茶なことをしていたってだけの話で、俺は、あくまでも一般論を言っている。君が王として永遠に世界の全てを完全に支配するっていうことが前提なら、また全然話が変わってくるさ」
「……」
「それで? ここからどうする? 世界の状態は分かったよね? マジで、誰もいないよ。残っているのは、俺と……あと、真・第一アルファの過去センくんだけだ。この状況で……君はどんな選択をする?」
「んー……あのさ、もう一度確認するけど、トウシが死んでるの、マジ?」
「彼を買いかぶらない方がいいよ、センくん。……いや、田中トウシは、もちろん、すごい男なんだよ。それはもちろん認めるさ。トウシは俺以上の天才だし、知性という点では、君を置き去りにしている。この世で一番の天才。それは間違いない。けど、君と比べたら、まだ常識の範疇にいる。今の俺なら殺せるよ」




