93話 センエースだけは常にいつだって特別扱い。
93話 センエースだけは常にいつだって特別扱い。
「失敗は成功の母で……そして、俺は、あの時よりも、はるかに出力を増している。『恒久極蟲龍神化3』に辿り着いたからね」
「……」
「失敗の経験をもとに穴をふさぐ。トウシのやり方はだいたい分かった。完全には理解できないけど、対策ぐらいはできるさ。出力を遥かに増した状態で、死ぬ気でトウシを隔離させてもらう。俺は死ぬ気で挑むよ。どうにか時間を稼ぐためにね。俺よりも、トウシの方が上だから、いつかは確実に突破されてしまうだろうけれど……けど、最悪でも、5回……できれば10回以上は、世界を終わらせてみせる。全ての正しい弱い命に、理不尽と不条理をたたきつける。その時の映像を黒の章みたいにまとめて、いつか、君に見てもらうつもりだ」
「……」
「さあ、どうするセンくん。このままタイムリープするかい? それとも、俺と交渉してみるかい?」
「交渉ねぇ……いいだろう。自前のシューズボックスから、根こそぎ、靴をもってこい。片っ端からナメてやる。土下座も土下寝も、言われるがまま。お前の要求、全てを飲んでやる。ついでに、お前を王とあがめ、奉ってやるよ」
「ふふふ。この期に及んで、まだ、それを言うところが、いかにもセン君って感じだねぇ」
と、楽しそうに笑ってから、
「センくん。タイムリープは無しだ。それ以外の方法で、この絶望を回避する手段を見つけてくれ。それが、君に対するたった一つの要求だ」
「……ちなみに一つ聞いていいか?」
「なにかな?」
「マジで全員死んでんの? トウシも?」
「トウシは君に次ぐ優れた人材だけれど、君とは違う。この時間軸上のトウシでは、『恒久極蟲龍神化3』に辿り着いた俺の相手はできないよ。なんにだって限界ってのはある。限界を永遠に無視できるのは、全世界一の美しさを誇る君だけの特権だ」
「ちなみに、過去の俺は? 仮免を使って、禁域の扉から、真・第一アルファに飛んだ過去の俺……」
「真・第一アルファにいる原住民もゼノリカの面々もみんな殺したけど、過去の君だけは殺せていないよ。センエースだけは常にいつだって特別扱いさ。過去とはいえ、君だけは流石に殺せないからね。……今、過去の君は、誰もいない真・第一アルファで、独り、どうにかしようと、駆けずり回っているよ。すごいよね。普通なら、絶望して、心が折れそうなものだけれど、そんな様子は微塵もないよ」
「……」
「さて、情報を与えるのは以上だ。ここから先は、自力でどうにかしてもらうよ。さっき言った通り、過去に飛ぶのはなし。それ以外なら、何をしてくれてもいい」
「……」
「さあ、まずはどうする、センくん」




