92話 交渉。
92話 交渉。
「素晴らしいコメントだ。不屈という概念の擬人化と言っても、なんら過言じゃない。……世界中のヒーローに聞かせてあげたいね」
パチパチと、乾いた拍手をしてから、
蝉原は、センに、
「ただ、一つだけいいかな?」
「なんだ?」
「君が時間をかけて探し回っている間……世界の人間は、何度も何度も死ぬことになるんだよ?」
「……」
「もう嘘はやめて本音を言うけど……今回、俺は、世界中の人間をほぼ一瞬で殺した。だから、誰も、苦しんではいない。これは、君の心を慮ったサービスだ。……けど、次回以降は違うと言っておく。凄惨に殺す。特に、赤ん坊とか子供とか善人とかを中心に、じっくりと甚振って殺す。とことん地獄を見せてから殺す。実際のところ、俺は、さほどサディストってわけでもないけれど、君との交渉のためなら、俺は何でもできる。『生まれたばかりの小さい赤ちゃん』だろうと、『身を削って他者を助けている真の善人』だろうと、 『可愛い小動物』だろうと、関係なく、良心の呵責とかを気にせず……徹底的に壊しつくすことができる。この辺が、俺と君の一番の違いと言ってもいいかもね。方向性の違いとかいう次元ですらない、根本的な違い」
「……」
「どうせ、タイムリープするから関係ない? そう割り切ることができたら、君の人生も楽だったかもしれないね。実際、どうしようもない状態に陥った場合、君は、ちゃんと割り切って、『最善』を追及するだろうけど……でも、今は、まだ、俺と交渉できる余地が残っている。まだ、『どうしようもない状態』ではない」
蝉原が流暢にしゃべっているのをぶった切るようにして、
「そうとなれば、ダラダラ探すような真似はしねぇ。タイムリープしたら、すぐに、ふやけるほど、トウシのクツをなめて、シュタイン〇ゲート世界線に進む道を見つけて頂く。お前がいくら悪魔的鬼手を打とうと、トウシがはしゃげば終わりだ。あいつの頭脳なら、必ず答えを見つけ出す」
「もちろん、見つけるだろうね。そして、田中トウシが導き出した至高のプランを、最高の英雄である君が確実に実行する。それで、めでたしめでたしだ。そんなことは分かっているよ。なんせ、ついさっき、経験したことだからね。つまり、そんなことは織り込み済みで、俺は、今、君と交渉しているってこと」
「……」
「バーチャルディメンションクラッシュでのアレコレ……『ショデヒ騒動』で、俺は、トウシを隔離して……そして失敗した。けど失敗は成功の母で……そして、俺は、あの時よりも、はるかに出力を増している。『恒久極蟲龍神化3』に辿り着いたからね」




