90話 全ての命がセンエースの中で一つになる。
90話 全ての命がセンエースの中で一つになる。
「……ふざけ散らかしやがって、このクソ野郎が……ちっ」
そこで、センは、瞬間移動で、グロラリアのダンジョンの外に出る。
そして、一気に、上空へと飛びあがり、視力を強化して、『原初の世界全体』を見渡してみた。
「おいおい……マジで、人が一人もいねぇじゃねぇか……ゼンも、シグレも……ハルスも……フーマーの連中も……天国の連中も……全部……」
そこで、蝉原が、センの背後まで、優雅に飛んできて、
「だから言っただろ? すでに、全てが君と一つになったんだ。この原初の世界だけではなく、他の世界も命もすべて」
「何が一つになった、だ。……お前が殺したんだろうが……死念が漂いまくってんぞ。お前からも、エグい死臭がするし……どうした、蝉原。無意味な無差別殺人とか……あまりにもダサいって。瀟洒性をなくしたら、お前はお前じゃなくなるぞ」
「……『全ての命が君と一つになった』にせよ、『全ての命を俺が殺した』にせよ……『君以外の生命全部が消えてなくなった』という事実に変わりはないわけだけれど、君、案外、冷静だね」
「直近で何度か、人類全滅を経験しているんでな。慣れってのは怖いね」
「……ふふふ」
「全ての命が俺の中で一つになった……とかいう、人類補完計画ネタのボケはもういいから、マジで、そろそろ、ガチで話し合おうや。お前が殺したんだろ?」
「全ての命が君の中で一つになる……というのが、物語のオチとして、最も綺麗だと、俺は思うんだよね。まあ、でも、それは、あくまでも、物語として綺麗だと言っているだけで、『俺が最も望んでいる結末かどうか』と言うと……普通に否だけどね。俺の目的は、最果てに辿り着いた俺と君とで本気で殺し合うこと。そして、俺が勝利すること。君を殺し、全てを無に帰すことが俺の最大目標」
「そう、大事なのは順番だ。まずは、俺を殺そうと頑張れ。俺が無様に負けたその時は、もう、どうしてくれてもいいよ。本当なら、世界の王になってほしいけど、どうせ、言っても無駄なんだろ?」
「ああ、ムダだね」
「ムダだとはわかっているが、今後も、俺は言い続けるぞ。お前が一番適任だと永遠に俺は思っているからな。少なくとも俺よりマシだ。なんだったらトウシよりも上だ。お前のカリスマは世界を照らす光になれる。……まあ、それは、今はいいとして……とにもかくにも、大事なことは順番だ。お前が世界を終わらせるのは、俺を殺したあと。俺を殺す前に世界を終わらせるのはタブー。理解できたか? というわけで、やり直しだ。二度と、順番を間違えるなよ」
「タイムリープする気かい?」




