89話 これが……命の答え。
89話 これが……命の答え。
「ゼノリカの面々も、他のアルファの人間もベータの人間もエックスの人間も……神の世界の面々も……今は、君と一つになっている。……センくん。君は、見事、ラスボスであるショデヒのバーチャルディメンションクラッシュに打ち勝って、『命の答え』に辿り着いた。全ての命がセンエースの元で一つになる、センエース補完計画……それがついに完成したんだ」
「あんな雑魚がラスボスであってたまるかよ。こんだけ、永いこと、あっちこっち駆けずり回って、必死になって頑張ってきた旅の終着点が、ショデヒって……もし、マジでそうだったら、俺の神生、ショボすぎるだろうが」
「そうかな……ショデヒも、だいぶ強かったと思うけど」
「数字は、な。確かに、あいつは、最終固有龍2を使っていたから、そこそこマシだったし、戦闘力も、俺が相手だったからどうしようもなかっただけで、普通に強かった。あと、あのタイムクラッシュだか、バーチャルディメンションだか知らんが、あの技も、相当厄介だったのは事実だ。けど、そんだけ。俺の敵としては役者が不足しすぎている。そもそもの話、実際のところ、あいつを倒したのは、俺じゃなく、お前だし」
「君がどう思うかは、君の自由だから、好きにしてくれればいいんだけど……事実として、君は、ゴールにたどり着いた。そのご褒美として、君に、これを進呈しよう」
そう言いながら、蝉原は、アイテムボックスから、赤い本を取り出した。
見覚えのあるその本は……冒険者試験を突破した証……『冒険の書』。
禁域の扉を開く鍵でもある、文字通りのキーアイテム。
「これこそが、君が長い間、ずっと望み続けた最後のワンピース……本物の冒険の書だ」
「……」
「どうしたんだい? さあ、はやく受け取りなよ」
センは、冷めた顔で、冒険の書を受け取ると、
「で、これはいつ爆発するんだ?」
「やだなぁ、センくん……『冒険の書だと偽って爆弾をわたす』みたいな、そんな、しょっぱい奇襲はしないよ。そもそも、俺は君に攻撃をしない。俺はもう、君なんだから。俺は君で、君は俺なんだよ」
「俺のクローンってこと?」
「違うよ」
「なんか、どっかの芸人のネタで、こんなのがあったな……」
「芸人がネタにしていない事象なんて、この世には、もうないんじゃないかなぁ」
「小ネタはもう十分だから、いいかげん、輝木をどこにやったか吐け――」
「自分で探してみればいいじゃないか。そうすれば分かるよ。もう、どこにも、誰もいないってことが」
「……ふざけ散らかしやがって、このクソ野郎が……ちっ」
そこで、センは、瞬間移動で、グロラリアのダンジョンの外に出る。




