87話 もう、トウシひとりでいいんじゃないかな。
87話 もう、トウシひとりでいいんじゃないかな。
蝉原は、最後に、心の中で、
(……その証拠をみせるよ、センくん。他の誰にもできないことが、俺にはできる。少なくとも、これは、ショデヒ程度には絶対にできないこと。まあ、俺一人だけでも出来ないことだから、そこまで胸を張ることもできないけれどね。……恒久極蟲龍神化3の出力と、ショデヒのバーチャルディメンションスキル……そして、『原初魔カード-魔王』……その全てを使えば、『可能性』はある……問題は、誰をゲームマスターにするか…………誰か……誰か………………いた……『お前』なら適任だ。頼んだぞ……)
そうつぶやいてから、
「じゃあね、センくん。いつか、また、どこかで会おう」
スっと、溶けるように、センキーの前から姿を消した。
……残されたセンキーは、数十秒ほど、
静かに、黙って、終わった世界を見つめてから、
ヘニャっと合体を解除して、
センエースと田中トウシの二人に分かれた。
合体解除した二人は、それぞれ、体が正常に動くか確かめつつ、
「トウシきゅん……蝉原&トリデの処理はやってやったんだ。あとのことはお前に任せたぜ。できないとは言わせない。お前に不可能はない。俺は詳しいんだ」
「言われんでも、既に準備は万端や。この時空間攻撃の主犯は、蝉原が対応済み。お前の中の無限転生も、銀の鍵に改造した」
そう言いながら、銀の鍵をセンの目の前に出現させる。
銀の鍵を掴んだセンに、トウシは、
「銀の鍵のカスタムも終わっとる。ショデヒによって無茶苦茶にされた時間の流れを完全にリセットし、その上で、融合固有に覚醒したお前のデータを将来に引き継げるように調整した」
「完璧だぜ。……『もう、トウシひとりでいいんじゃないかな』と言わざるをえないぐらいの完璧な仕事ぶりだ」
「ワシに言わせれば、ワシなんかおらんでも、お前ひとりがおったら、どうとでもなるって気がするけどな」
「謙遜するじゃねぇか。不快だぜ。自分が積み重ねた特大の功績を、『大したことはしていませんけど?』みたいな態度で軽くあしらっていく、その姿勢……万死に値する、許されざる暴挙、地下鉄で毒ガスを撒くのに匹敵する凶行」
「誰が言うとんねんって感じやけど、まあええわ」
トウシがなんか言っているのを聞き流しながら、
センは、
「俺はまだ……頑張れる」
お決まりの言葉を口にして、銀の鍵を行使する。
歪んだ時が、正常な状態に戻ろうと、激しく動き出す。
すべての軋みが修正されていく。
その流れの中で、センの視界がボヤけて……意識が薄くなっていく……
――こうして、センエースの永いようで短いようでクソ長かった、第一アルファでの戦いが幕を閉じた。




