86話 エンゼルを全員分集めないと完成しない。
本日の2話目です。
86話 エンゼルを全員分集めないと完成しない。
「トリデサイゴを見つける難易度ってどのぐらい? 銀のエンゼルを見つけるのと、どっちが難しい? 流石に、金のエンゼルを見つけるよりは簡単だよな?」
センは、テキトーなことを口にしつつ、心の中で、
(さっき、俺が無意識で使った『アルカナム・オメガバスティオン』……あれは、俺の中に、『永世月光神化』が目覚めたから使えるようになったのか?)
などと思っていると、
セミガニャルが、センキーの胸に、ソっと手を当てた。
そして、
「託したぞ」
『センエース』の中に何かが注がれる。
センは、自分の中で、オメガバスティオンが強化されていくのを感じつつ、
「ああ、確かに……なんか、強化された気がする。オメガバスティオンで相手のスペシャルを一瞬キャンセルできるようになった……気がする。試してみないと、マジで使えるか分からんけど……んー……あ、でも、フルドライブってやつは使える気がしねぇな。あれ、もしかして、エンゼルを全員分集めないと完成しない感じ? ……ダル……しんど……つら……」
そんなことをつぶやいていると、センキーに触れていたセミガニャルが、ガクっと意識を失って、その場にバタリと倒れこんだ。
その後、見た目が蝉原になって、スクっと起き上がる。
蝉原勇吾は、パンパンと服の土埃を払いながら、
「トリデからタスキを託されて……また一段と男前になったね、センくん」
「お前、気絶してたんじゃねえのか?」
「してたよ。時間が経って意識を取り戻した。それだけのことが、そんなに不思議かい?」
「……別に。てか、男前って言葉、なかなか味わい深い単語なのに、昨今の若者はほぼ使わねぇよなぁ。もったいねぇぜ」
「イケメンって言葉は、なんだか薄い感じがするよね。……ふふ……なんだか、俺達、老害みたいだね」
「みたいっつぅか、実際、相当な老害だろ。俺もお前も。お互い、どんだけ年食ってんだって話だ」
柔らかな言葉を交わし合ってから、
二人はお互いの目を睨み合う。
パチパチと、線香花火みたいな、小さな火花が、両者の間で、ちょっとだけ弾けた。
蝉原は、ニコっと笑い、
「エンゼル集めだけじゃなく、龍化の練習もしておいてくれよ、センくん」
「そんなことをお勧めしていいのか? 俺が、これ以上強くなったら、お前、太刀打ちできないぜ」
「大丈夫だよ。まだ、たくさん方法がある。俺は最後の最後まで、ちゃんと君についていくよ。誰がどれだけ振り落とされても……俺だけは、必ず、君の足にしがみつく」
そう言って、蝉原は、最後に、心の中で、
(……その証拠をみせるよ、センくん。他の誰にもできないことが、俺にはできる)




