81話 力と記憶を奪われ、それでも、地獄に立ち向かい続けた意地と誇り。
81話 力と記憶を奪われ、それでも、地獄に立ち向かい続けた意地と誇り。
「殺神覇龍拳!」
最大級のダメージが出る技でシッカリと削られていく。なんの文句も言いようがない華麗なパーフェクトコンボ。
『センエースの異常生命力』がなければ、とっくの昔にノックアウトされていただろう。
「うっ、ぐっ……ぜぇ……はぁ……うぅ……」
『普通なら死んでいる攻撃』を何度も受けていながら、
なんだかんだ、普通に生きている、不死身の閃光。
「つ……強いぜ、蝉原。……さすがだ、惚れるぜ」
素直な感想を口にしつつ、
満身創痍の体を引きずり、
「ショデヒが最終固有龍2を使ってきた時は、実質経験値が低すぎてゴミみたいなもんだったが……お前はやっぱり、格が違った。……強すぎて、ションベンちびりそうだ。オムツ持参でくるべきだったぜ。……準備の足りなさを猛省するばかり」
深手を負っているセンキーをみつめながら、
セミガニャルは、心の中で、
(……そこらのしょっぱい悪役なら、この優勢な感じを受けて『勝てる』と思うんだろうけど……君を深く知っている俺は、全然、そんなこと思えない。むしろ、絶望している。……ひしひしと感じるよ、センくん……俺の武に圧迫されたことで、君の中に眠る『新しい可能性』が、『シッポを踏まれた虎』みたいに、ブチギレ状態でムクリと顔をあげた。俺はまた……君にボコボコにされる……もう、わかっているんだ……君を誰よりも愛している俺だから)
「よくもまあ、これだけ、気持ちよくボコボコにしてくれたもんだなぁ、蝉原ぁ……やっぱ、お前は最強で最高だぜ」
「嬉しいね。君からの評価ほど心を震わすものはない。酒も女も薬も必要ない。君がいるだけで、俺の全部が脳汁で包まれる」
「いいキモさだ。おかげで飛べるぜ。マジで感謝する。お前がいるおかげで、俺の中に眠る俺の起こし方がくっきりと見える。力と記憶を奪われ、それでも、地獄に立ち向かい続けた意地と誇りが……『一つの形』になっていくのを、ズッシリと感じる。感謝するぜ、お前と出会えた、これまでのすべてに!」
感情を言語化した上で、
グっとかみ砕くように、
「ああ……たぎる……溢れる……」
膨らんでいくセンキーを見つめながら、
セミガニャルは動きを止めた。
本来であれば、覚醒を邪魔するために動くべきなんだろうが、
しかし、一切、そんな気にはならなかった。
セミガニャルという大きすぎる絶望を前にして、
積み重ねてきたものを暴走させようとするセンキーを、
セミガニャルは、ジっと、おとなしく見つめていた。
「うぅうううう! うぉおおおおおおおおおおお!!」
ついには、カっと光り輝く。
膨大に積み重ねてきたセンエースの全部が沸騰する。




