61話 お前ら、どっちも性格が終わっているから、顔を見たら殴らずにはいられないんだろうが……ここは、俺の顔に免じて、一旦、我慢してくれ。
61話 お前ら、どっちも性格が終わっているから、顔を見たら殴らずにはいられないんだろうが……ここは、俺の顔に免じて、一旦、我慢してくれ。
「アホほどワシと闘い続けたから、ワシの武に慣れとる』という不公平すぎるディスアドバンテージがなくても、ワシではお前を殺し切れる気がせん」
「お察しの通り……俺をボコすことはできても、俺を『殺し切る』のは難しいと思うよ。『しぶとさ』に関しては本気で積んできたからね」
ニコっと微笑みながら、積み重ねてきた自分の強さに胸を張る蝉原。
そこで、センが、
「オーケーだ、お前ら。正直、現状、何がどうなってんのか、あんまりよくわかってねぇが、俺達同士でヤり合うコトに意味がないことぐらいは、なんとなくわかった。というわけで、蝉原&トウシ……お前ら、今度こそ、ケンカはやめろ。お前ら、どっちも性格が終わっているから、顔を見たら殴らずにはいられないんだろうが……ここは、俺の顔に免じて、一旦、我慢してくれ。まずは、3人で一丸となって、このやべぇ状況をどうにかするんだ。ご覧の通り、トリデのせいで、また世界が崩壊しているが、蝉原がタイムリープできるらしいから、その点に関しては、どうとでもできる。まずは、三人で、力を合わせてトリデをぶっ殺す。トリデの野郎、なんでか知らんが、なかなか死なない。性根も生命力もゴキブリみたいなやつだが、俺たち『狂気のズッコケ三人組』なら、流石に、トリデを殺し切れるだろう。で、トリデを血祭りにあげたあとで、蝉原がさっき言っていた『銀の鍵』とやらを使って、もう一度、『タイムリープ』するんだ。これで、オールオッケーのトゥルーエンド一直線だ。作戦は理解できたな? よし、総員、配置につけ。フォーメーションAでトリデに奇襲をしかけ、フォーメーションSSでトドメをさすぞ」
と、必死になって、
『一緒にトリデを倒して、お願い』と、
『ひと狩りいこうぜ要請』をかましていくセン。
だが、蝉原は、そんなセンからの救援要請をシカトして、
トリデに視線を送ると、
「トリデ……悪いけど、君の力を貸してもらうよ。とてもじゃないけど、俺一人では、あの二人を相手にすることは出来ない」
と、そう言いながら、トリデの背中にソっと手を当てる。
トリデは、一切抵抗することなく、蝉原の要請を受け入れて、
「好きにすればいい……が、私と貴様では、センエース&田中トウシには勝てないぞ」
「勝てるかどうかは、正直、どうでもいいんだよ。大事なことは、扉を開くことだ」
蝉原は、本音を口にしてから、
「――イビルノイズ/ムーンライト・サンソウル・アマルガメーション――」
詠唱の直後、
蝉原の全てが、
トリデの中へと溶けていく。
と、同時に、
トリデの全ても、
蝉原の中へと溶けていった。
溶け合って、混ざり合って、
そして、ほんの少しだけ、
――……自由になるの。
「……すぅうう……はぁぁあ……すぅうう…………はぁああああ……」
不完全な一つになった蝉原とトリデ。




