60話 ヘイ、蝉原。ついでだから、トウシの愚痴だけじゃなく、誰が未来の記憶をもっていて、誰がもっていないのか、その辺、もろもろ、教えてっ。
60話 ヘイ、蝉原。ついでだから、トウシの愚痴だけじゃなく、誰が未来の記憶をもっていて、誰がもっていないのか、その辺、もろもろ、教えてっ。
耳をつんざくような音が響き渡り、センとトリデ、両者の間に、物理的な意味での『大きな亀裂』が走った。急に現れた『次元の裂け目』……その奥から、だいぶボロボロの蝉原が出てきた。
「はぁ……はぁ……はぁ……つ、強すぎる……本当に理不尽だ……俺は事実として、今日までに、膨大な時間を積んできたのに……何をしても、てんで相手にならない……こんなこと、あっていいのか……」
ダンプにはねられた直後ぐらいの全身ボッコボコで、
明確に死にかけてはいるものの、
普通に息をしている、その様子を見て、
センが、
「すごい既視感……デジャブにもほどがある……」
と、呆れ交じりにそうつぶやいてから、
ボロボロの蝉原に、
「あの蝉原さん……あなた、もしかして、また、あの『鬼畜天才ゴミカスゲロ野郎』にボコられている感じ?」
「ああ……そうなんだ……勘弁してほしいよ。毎回、口酸っぱくして、手加減しろって言っているのに、全然手を抜いてくれないんだ」
「……その反応を見るに……どうやら、お前は、未来の記憶があるっぽいな。ヘイ、蝉原。ついでだから、トウシの愚痴だけじゃなく、誰が未来の記憶をもっていて、誰がもっていないのか、その辺、もろもろ、教えてっ」
「未来の記憶を持つのは、君と俺と田中トウシ……あと、トリデだね」
「ヘイ、蝉原。そもそも、なんで、俺達は、未来の記憶を持っているの?」
「銀の鍵という、『タイムリープできるチートアイテム』を使ったからさ。本来なら、『世界線移動後も記憶を維持できる権利』を持っているのは、『銀の鍵の使用者である俺』だけなんだけど……田中トウシが色々と無茶をした結果、俺の記憶だけじゃなく、田中トウシとセンエースの記憶も、過去へと飛んでしまった。トリデは別枠。あいつの中に流れる時間や記憶に関するシステムは、俺もよくわからない」
「なるほど、つまり俺は脱げばいいんだな?」
「ああ、100%、その通りさ。君の言うことに間違いは一つもない」
「……」
ここぞとばかりにブチかました『渾身のファントム』をスカされたセンが、無言でふてくされていると、
そこで、
また次元に亀裂が走った。
そして、その奥から、
蝉原ほどではないが、そこそこの大ケガを負っている『田中トウシ』が這い出てきて、
「……蝉原……ジブン、ほんまに、エグい生命力しとるな……あと、異常に強すぎやな。『何度もタイムリープしまくって、アホほどワシと闘い続けたから、ワシの武に慣れとる』という不公平すぎるディスアドバンテージがなくても、ワシではお前を殺し切れる気がせん」
「お察しの通り……俺をボコすことはできても、俺を『殺し切る』のは難しいと思うよ。『しぶとさ』に関しては本気で積んできたからね」
ニコっと微笑みながら、積み重ねてきた自分の強さに胸を張る蝉原。




