59話 お前という概念の中で、一番、腹が立つのは、その視線だ。『深みのある強さ』みたいなものを無駄に強く感じて、『自分のしょっぱさ』が変に際立って、無性に惨めになる。
59話 お前という概念の中で、一番、腹が立つのは、その視線だ。『深みのある強さ』みたいなものを無駄に強く感じて、『自分のしょっぱさ』が変に際立って、無性に惨めになる。
「俺は、『お前の鬱陶しい言動』に対し、『やりたきゃテメェでやれ』って打ち返しただけだぞ。むしろ、アンガー先生のスケジュールを管理しなきゃいけないのは、俺の方だと思うんだが?」
言葉を並べながらも、センは『自身の奥底にあるエネルギー』をグツグツと、ほとんど過剰なほどに、煮えたぎらせている。
『次の一手で確実に殺そう』と、心を燃やしている感じ。
センは、心の正確な位置なんて、一ミリも知らない……が、
今だけは、首をかしげながらではあるものの、
『ココにあるかも』と、推論を騙れる程度には、
心とやらの脈動を、おぼろげながら、感じていた。
そんなセンの、ふつつかな鳴動を、
トリデは、目ざとくキャッチしていく。
『気にしているものは目に入りやすい』の法則。
トリデは、グっと腰を落として、
センの次の一手に備えている。
『瞳の奥』で『小さく揺らめく火の粉』を、
有限性を持つ実質的なエネルギーに変えて、
センエースの暴力と向き合うつもりの様子。
ぐつぐつと匂い立つ。
ガチャガチャと、際限なくエントロピーが喚く。
センエースとトリデサイゴ。
互いに、向き合い、したたかに、しなやかに。
十分に、質量が高まった、と理解したセンは、
「主人公みてぇな目ぇしてんじゃねぇよ、モブ面のくせに。……トリデサイゴ……てめぇの発言と行動には、いちいち、イラつかされたが……お前という概念の中で、一番、腹が立つのは、その視線だ。『深みのある強さ』みたいなものを無駄に強く感じて、『自分のしょっぱさ』が変に際立って、無性に惨めになる」
本音を吐露したセンに、
トリデは、
「奇遇だな。まったく同じ意見だ」
合わせるように、本音をかぶせていく。
お互い、言いたいことはほとんど言い合った。
そんな錯覚だけが世界とコスモの全部になってまたたく。
……宇宙が一瞬、シンと静かになった。
『何かが高まっていく』と、
センとトリデの両方が思った。
静かな時間を蹴り殺すみたいに、
センは、クイっと顎の位置をあげて、
できるだけ、トリデを、精神的&実質的に見下ろしながら、
「行くぞ、トリデ。……今度こそ、死ね」
殺意の波動を限界まで高めて、
センは飛び出そうと腰を落とした。
……と、そこで、
ギニギニグニィイイイイォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!
と、耳をつんざくような音が響き渡り、
センとトリデ、両者の間に、
物理的な意味での『大きな亀裂』が走った。
急に現れた『次元の裂け目』……
その奥から、
だいぶボロボロの蝉原が出てきた。
「はぁ……はぁ……はぁ……つ、強すぎる……本当に理不尽だ……俺は事実として、今日までに、膨大な時間を積んできたのに……何をしても、てんで相手にならない……こんなこと、あっていいのか……」




