33話 なんのヒントもなしで、『蝉原が、センエースから無限転生を奪いとり、それを銀の鍵に改造して、タイムリープしている』なんてことに、気付くわけがない。
33話 なんのヒントもなしで、『蝉原が、センエースから無限転生を奪いとり、それを銀の鍵に改造して、タイムリープしている』なんてことに、気付くわけがない。
(……『バグるのを覚悟で、記憶の一部を送り込む』か、もしくは、『多少の経験値を忍ばせる』というのが関の山)
記憶よりも、経験値の方が容量的に少し軽い。『記憶』となると『多少はまとまっていないと意味がない』のに対し、『経験値』なら『ほんのわずか』でも一応は意味がある。
(……ワシなら、銀の鍵のメモリを増築することも不可能ではないけど、そんな派手な真似をしたら、当たり前やけど、蝉原にバレて、ワシが介入した部分が全てデリートされる。何よりの問題は、蝉原の警戒度が上がって、次のループで、ワシが手出しできんようになる。それが最悪)
『蝉原が銀の鍵を持っていて、タイムループしている』という事にトウシが気づいている……
ということに、まだ蝉原は、気づいていない。
気づいていないというか、
『そんなもん、分かるわけがない』……と蝉原は思っている。
――『思っている』というか、考えてすらいない。
蝉原は、
『銀の鍵に関する知識』を、
『自身が有する絶対的なアドバンテージである』と信じて疑わない。
当たり前。
普通なら分かるわけがないから。
なんのヒントも与えていないのに、
『蝉原が、センエースから無限転生を奪いとり、それを銀の鍵に改造して、タイムリープしている』
なんてことに、気付くわけがないから。
いくら田中トウシが天才だからと言っても、
そんな事に、ノーヒントで気づけるわけがない……
というのが、『所詮は常識人でしかない蝉原』の意識的限界点。
これに関しては、蝉原が悪いというわけではない。
センだって、『ノーヒントで、蝉原のループに気づくのは不可能』と普通に考えるだろう。
センや蝉原以外……田中家の面々だろうと、誰だろうと、
『蝉原がループしていることに気づくのは不可能』と当たり前に考える。
その不可能を可能に出来ると信じて疑わないのは、
この世でただ一人……田中・イス・東志という異次元の変態だけ。
(……『記憶』を過去に送るんは無理……というか、無意味。そして、『小さな経験値をしのばせるだけ』やと、結局、今回みたいに、後手後手に回るだけ……なにか、この閉塞状況を打開する切り札になりうるものがないか……衝撃的な決定打は……なにか……なにか……)
ありえないレベルの奇跡的な天才性で、
蝉原の絶対的アドバンテージに立ち向かってみせた。
ここまでの段階でも、すでに、人外の偉業を成しているトウシ。
(なにか……)
だが、トウシは、ここで止まらない。
撃滅のプルスウルトラが止まらない。
もっと先へ、もっともっと遥か先へ。
(…………なにか…………)
その狂った頭脳を、さらに焼き切れるほど、豪速回転させて、起死回生の一手を探した結果、
(――あった)
ありとあらゆる角度、ありとあらゆるデータの海を、爆速でくまなく散策した結果、
『蝉原やショデヒによって廃棄された山ほどのジャンク情報』の中から、
『アイテムショップ』に関するデータをサルベージすることに成功した。




