30話 どっちも人間性がクソだから、相手のことが不愉快で仕方がないっていう、その気持ちは、痛いほど分かるが、今は、人間同士で、争っている場合じゃねぇ!
30話 どっちも人間性がクソだから、相手のことが不愉快で仕方がないっていう、その気持ちは、痛いほど分かるが、今は、人間同士で、争っている場合じゃねぇ!
まるで、トウシには、蝉原の全てが見えているようだった。サクっと回避してみせたトウシは、お返しのカウンターとして、右フックのフェイントを経ての左ハイキックをぶちかましていくが、その一手に対し、蝉原は、ギリギリだったが、完璧な対応をしてみせた。
トウシは、自身の天才性で、蝉原を圧倒しているのだが、
しかし、蝉原も、トウシの天才性に、なぜだか、ギリギリのところで喰らいつけている。
――蚊帳の外にいるセンは、
『終わっている世界』で、独り、
バッキバキに闘っている二人を見て、
「やめて! 私のために争わないで!」
と、一旦、小ボケを枕にしてから、
「おい、聞け! お前ら! いったん待て! タイムだ! どっちも人間性がクソだから、相手のことが不愉快で仕方がないっていう、その気持ちは、痛いほど分かるが、今は、人間同士で、争っている場合じゃねぇ! まずは、ドラ〇ンボールを見つけるのが先決だ! おい……聞けぇえええええ!!」
ピーピーわめいているセンの視界の向こうで、
トウシは、蝉原と、ボッコスカ殴り合いつつ、
その高性能な脳をフル回転させていた。
(蝉原勇吾……こいつ、ワシの一挙手一投足に慣れすぎ。明らかに、ワシと戦うん、初めてやない。ただ、ログを見ても、『ワシとこいつが闘った過去』みたいな痕跡は一切ない……)
蝉原と殴り合いつつ、脳内で、いくつかの手法を用いて、
トウシは、『自分と蝉原の間にある関係性』を精査していった。
確実に、蝉原は、『田中トウシとの戦闘経験』を積んでいる。
だが、トウシ自身には、蝉原と戦った記憶が一切ない。
色々と調べ、
『自身の記憶が封じられている可能性』や、
『ログが改ざんされている可能性』など、
多角的に考えた上で、
トウシは、次のような結論を出した。
(……おそらく、蝉原はタイムリープしとる)
ほかの可能性も、まだ残っているが、
諸々を踏まえた上で、最も合理的かつ整合性が取れている結論が、
『蝉原だけが記憶を過去に持ち越している』というものだった。
(……もし、『蝉原がタイムリープしとる』という結論が真ならば……『その方法』を見つけることが……ワシならできるはず)
そう考えたトウシは、コスモゾーンにアクセスしつつ、
蝉原勇吾自身に対しても『解析関連のアタック』を仕掛けていく。
物理的に蝉原の顔面を殴りながら、
密かに、バレないように、
蝉原の意識の裏側から、
ソっと……静かに……
(見つけろ。絶対にある。タイムリープを実現させようと思えば、とんでもなく膨大なエネルギーが必要。そんなもん、隠し切れるわけがない)
これはパズル。
蝉原が隠しているものを見つける宝探し。
(どこかに、絶対……)
本来であれば、見つけられるわけがない。
蝉原はバカじゃないし、用心深いし、なにより臆病で、トウシやセンにビビっている。
だから、解析系の魔法やスキルに対する防御策を山ほど用意している。




