26話 漫画というのは、もっと、ポップに、アーティスティックに、デフォルメをきかせて、時にはパースをシカトして、踊るように、ビビッドに描かないといけません。
26話 漫画というのは、もっと、ポップに、アーティスティックに、デフォルメをきかせて、時にはパースをシカトして、踊るように、ビビッドに描かないといけません。
「砦ぇええええ!! お前の強さ、なんか、腹立つぅうううう! なんでだぁああああああ?! なんで、俺は、お前に、こんなにも腹が立つ?!」
「お前の感情を、私に聞くな」
かわし合った言葉に意味があるようには思えなかった。けれど、互いに彩る。
言葉の奥にある感情だけで、下手な自画像を仕上げていく。
踏み込んだ足に、センは、魂を込めていく。
グググンっと、広角レンズで切り取ったみたいに、
センエースの拳だけで、世界の視界がうまっていく。
「――龍閃っっ!!」
ギラついた瞳で、トリデの心臓をロックオン。
そのまま、勢いに任せて、
センは舞い散る。
「――崩拳っっっっ!!!!!」
豪快な一撃が、トリデの心臓をさらっていった。
ボフッッゥっと、
トリデの胸部に、ぽっかりと大きな穴が開く。
欠損治癒の魔法がどうとか、
そんなチンケな奇跡でどうにかなる深さではなかった。
トリデは、ゆっくりと天を見上げて、
「こんなに簡単に負けるのか……私は強いんだけどなぁ……」
と、そんな風に、
『悔しさがにじむ』というより、
『疑問符の方が強い感じ』で、そうつぶやいた。
そんなトリデに、センは、
「ああ、その感想は不遜じゃねぇ。てめぇは強かった。吐き気がするほどなぁ……けど、たった一つ、ガチの絶対的敗因が、てめぇにはある」
「……なにかな?」
「てめぇ、やる気ねぇだろ」
「……」
「感情が見えてきません。もっと、表情を豊かに描くようにしましょう。あなたの場合は、ただ顔を描いているだけですね。漫画というのは、もっと、ポップに、アーティスティックに、デフォルメをきかせて、時にはパースをシカトして、踊るように、ビビッドに描かないといけません。というわけで、これはボツです」
と、いったん、枕で、漫画編集者風に、ダメ出しを入れてから、
「俺を殺そうって気が微塵も感じられなかった。お前は、まるで、AIレベルの低いゲームキャラのように、ただ強さを振りかざしているだけ」
全力のマジダメ出しを受けたトリデは、
ため息交じりに、
「そうでもないんだけどな……」
ボソっと、そう言ってから、
「心は燃えていた。錯覚かもしれないが……」
最後にそう言うと、
そのまま、
『熱湯に投じた氷』みたいに、
スゥっと、世界に溶けていった。
トリデの姿が完全に、この世から消えてしまったところで、
センは、
「はぁああああ……」
と、一度、深くため息をついてから、
ドスっと、その場に、へたりこむように、座り込んで、
「……さて……さて……さて……ここから……どうしたもんかなぁ……」
『クソ丁寧に終わってしまっている世界』を見渡しながら、
ボソっと、そうつぶやく。
「魔〇ブウ編の最後のみたいに、『地球を元の状態に戻して』と『今日死んだ人全員を生き返らせて』のダブルの願いを叶えないといけないパターンだぞ、これ……ドラゴンボ〇ル、どこにあるかな……」




