17話 センエース性。その概念の中身は実際のところ、色々とあるが、ここでの意味は『追い込まれた時の爆発力』に限定される。
17話 センエース性。その概念の中身は実際のところ、色々とあるが、ここでの意味は『追い込まれた時の爆発力』に限定される。
「ああ、まさに、君の言う通り。俺は脆弱な子犬みたいなもの。だから、どうか、できるだけ、お手柔らかに頼むよ」
その発言に対し、トウシは、イラっとした顔をして、ペっと、血痰を吐きながら、
「……どういうつもりや、蝉原。……言うとくけど、おどれが、手を抜いとるコトぐらい、わかっとるぞ」
「手を抜いているだなんて、そんな、そんな……あの田中トウシさん相手に、そんなこと出来るワケないじゃないですか、こんな凡庸極まりないザコな俺が」
「……」
睨んでくるトウシに、蝉原は、微笑みを向けつつ、
心の中で、
(……本気で『削り』を入れてしまうと、君が、第二形態に覚醒しちゃうんでね。……田中トウシ……君の厄介な点は、天才性と同じぐらいの質量で『センエース性』をも有してしまっていること)
センエース性。
その概念の中身は実際のところ、色々とあるが、
ここでの意味は『追い込まれた時の爆発力』に限定される。
決して、『平常時の頭が変態』とか『モンスター童貞』とか『厄介メンヘラ』とか、そういうことではない。
(まだ、センくんと砦の闘いは終わらない。だから、今、トウシに覚醒されても困る。……覚醒したトウシとの本気の闘いはもうちょっと後だ)
色々と計算しながら、蝉原は、丁寧に、トウシとの殺し合いに向き合う。
★
認知の領域外で、蝉原とトウシがやりあっている裏……というか、表で、
『砦才悟とセンエースの壮絶な殺し合い』は続いていた。
戦力的に、『砦の方が圧倒的に強い』のは間違いないのだが、
しかし、戦況的には、ギリギリ五分と見ることが可能な状況だった。
『タイマンで闘っていて五分に見えなくもない』という状況なので、
周囲で見守っている数百万の砦が一斉にセンへと飛びかかれば、
もちろん、戦況には変化が起こるのだろうが……
しかし、仮に、数百万の砦が、一斉にセンへと襲い掛かったとしても、
『それでも、決着はつかないんじゃないか』……とまじめに思ってしまうほどに、
センエースの粘りが、えげつないほど驚異的だった。
砦が、どれだけの猛攻を加えても、センは、絶対に立ち上がる。
どれだけボッコボコにして、どれだけ魔法でペシャンコにして、
どれだけオーラでねじり切って、どれだけスキルで圧迫しても、
『不死身の擬人化』ことセンエースは、『まだまだぁ……』と、
当然のように起き上がって、ぐっちゃぐちゃの体を振り回して、
無駄としか思えない抵抗を、無駄に思えないぐらい続けている。
ちなみに、二人が暴れたことで、
第一アルファは、現状、世界の半分以上が崩壊している。
センは、必死になって、
広範囲に広げたドリームオーラ・オメガバスティオンで、
砦の攻撃から、世界を守ろうとしたのだが、
それを大幅に超える攻撃を、ガンガンに繰り出されるため、
どうしても、守り切れず、世界は、メッタメタに崩壊してしまった。




