10話 『俺の記憶と経験値データ』以外は、全部、『銀の鍵』のリセット効果で、初期化されているはずなんだけどなぁ。
10話 『俺の記憶と経験値データ』以外は、全部、『銀の鍵』のリセット効果で、初期化されているはずなんだけどなぁ。
トウシの視線に気づくと同時、蝉原は、ダっと跳ねるように、瞬間移動で、テキトーなダミーコントロールルームへと逃げ出した。
――そのコンマ数秒後、盛大な爆音と共に、蝉原たちが、一瞬前まで滞在していたコントロールルームが、ものの見事に爆撃される。
「なんだ! どうした! 蝉原ぁああ!! おい! 蝉原ぁああああ!!」
困惑しているショデヒを尻目に、
蝉原は、目の前に、『エアウィンドウ』を出現させると、
トウシの様子を確認しつつ、
ボソっと、
「すごいねぇ。……流石、田中トウシ。500万分の1を的確に見つけ出すぐらい、彼にとっては小学生の算数のドリルぐらい簡単なことらしい」
などと口で言いつつ、
蝉原は、改めて、時計を確認しながら、
心の中で、
(……『前の周』より、さらに2秒短縮……どんどん早くなっている。なんでだ? 『俺の記憶と経験値データ』以外は、全部、『銀の鍵』のリセット効果で、初期化されているはずなんだけどなぁ……)
そうつぶやいていると、背後から、
バチバチっという音がして、
「――流石に、小学生の算数のドリルぐらい簡単ではなかったけどなぁ。てか、だいぶしんどかったで」
次元の裂け目の向こうから出現したトウシ。
トランスフォーム状態で、首の骨をゴキゴキっと鳴らしつつ、
「わけわからんまま、『真っ暗で何もない場所』に閉じ込めやがって……気ぃ狂うかと思ったぞ。ワシやから、なんとか脱出できたけど……あんなもん、そこらの一般人やったら、最初の2時間ぐらいで、頭おかしなって発狂してんで。閉所恐怖症のヤツやったら、1分で息止まってもおかしくないレベルや。ふざけ散らかしやがって、ハゲタコ、ごらぁ」
だいぶバチギレで鼻息が荒い。
……そんなトウシを尻目に、
蝉原は、ニコリと微笑み、
まるで『事前に設定してあったセリフ』を音読するように、
「数日が限界だろうなぁ、と予測はしていたものの……まさか、本当に、あの領域から、たった数日で、脱出するとは……すごいねぇ。おまけに、脱出するだけじゃなく、携帯ドラゴンまで顕現させている……いやぁ、ほんと、すごいすごい」
そこで、ショデヒが、蝉原に、
「せ、蝉原! な、なぜ、田中トウシは、携帯ドラゴンをもっている?! 何もない領域に閉じ込められていたはずなのに、なんで!」
さっきから、ずっと、困惑が止まらないショデヒ。
そんなショデヒに視線を向けることなく、
蝉原は、フラットな表情で、
「そんなこと、知るワケがないだろう? 俺は、どこにでもいる平凡な宇宙一のヤクザでしかないんだから、田中トウシの異常性を事細かに理解することなんて出来ないさ」
などと、軽い前置きをした上で、
トウシに、
「どうせ聞いたってわかんないんだろうけど……一応聞いておこうか。絶対に理解できないから、別に教えてくれなくてもいいけど……田中トウシ、君は、なぜ、携帯ドラゴンをもっているのかな?」




