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65話 セファイル王国



 65話 



 セファイル王国は、この世界に存在する六大国家の一つで、序列は六位。


 なぜ最下位なのか。


 それは、誇れるものが何もないから。






 『世界最強の勇者』が第一王子ではあるが、あのバカ王子が、『狂った人格破綻者』だと言う事は、周知の事実なので、決して誇る事はできない。


 むしろ、勇者がいるせいで、『あれほどの祝福を受けた者を、よくも、あれだけ歪ます事ができるな』とバカにされてしまう始末。


 勇者の『力』はハンパではないので、武力という観点でナメられてはいない。


 だが、勇者以外の戦力は大したことがないので、『勇者さえ押さえてしまえば、どうとでもなる弱小国家』というのが、他国のセファイルに対する武力評価。




 六大連合が設立され、どの国も、そう簡単に戦争はできなくなったが、

 だからといって、戦争が絶対に起こらなくなったという訳ではない。


 いつだって、平和は、次の戦争までの準備期間でしかない。






 セファイルは、勇者がいる現在ですら、そんな扱いなので、勇者誕生前は、

 『世界で最も価値の低い国』とまで言われ、蔑まれていた。



 建国当時からずっと、

 何の取り柄もない、クソしょーもない国のくせに、


 妙な豪運を持っていて、

 どんなに大きな戦争に巻き込まれた時でも、


 なんだかんだで、最終的には、

「信じられん、耐えたぞ……っ」

 と、なんとか乗り越え、


 ついには、歴史の長さだけで言えば、堂々2位の千年国家になった妙な国。



 名産品も特産品も何もなく、特に資源があるわけでもないし、土地が豊かな訳でもない。




 そんな国に、第一王子が生まれてきた時、

 セファイル王国は、ついに、残念国家の汚名を返上できると喜んだ。


 生まれた瞬間から、すでに破格のオーラを放っており、

 三歳の頃までは神童と呼ばれていた人類の宝。


「ハルス王子は器が違う。セファイルの王などという小さな地位に収まらず、いつか、果てなき坂を登り切り、全人類を統べる世界の王となるだろう!」



 セファイル王国の誰もが思った。




 誰もがハルスの健やかな成長を望んだ。




 しかし、歳を重ねるにつれて、みんな、こう思うようになった。


「なんで、こうなった……」


 誰の言う事も聞かず、

 どこに行っても、必ず問題を起こす。


 文章にしてみれば、ただの迷惑な底辺ヤンキー。

 そんなゴミ人間でありながら、有する力は世界最強。



 最低最悪のバカ王子。

 ――それでも、使い道はあった。






 大帝国が滅んでから、魔王国が正式な国家として認められ、

 ――セファイルは、その下になった。


 これに、セファイルの王侯貴族(勇者以外)は激怒した。


 しかし、リーン・ラムド・サリエリという猛将を筆頭とする素晴らしい統率の取れた『魔王軍』を有する魔王国は強大で『武力評価』はすこぶる高い。


 おまけに、南大陸は、広すぎるため、九割が未開拓状態。

 未知の資源が山ほどあると目されている宝島。


 数多の金脈を支配している、強大な武力を保有する国。




 国の価値で言えば、どちらが上か。

 そんなもん、比べるまでもない。




 各国家の代表達は、

 とはいえ流石に、新興国の、それもモンスターの国を、

 一応は長い歴史を持つセファイルの上に置くというのは、あんまりにも……


 と、魔王国の暫定ポジションに悩んでいたが、


 現在の序列・歴史共にぶっちぎり一位であり、

 かつて、傍若無人で強欲な大帝国にすら、

『我々は、あなた方から何も奪わない。だから、我々から何も奪わないでくれ』

 と言わしめた、

 超大国『精霊国フーマー』が、


『あの強大な大帝国を滅ぼしたその武力は素晴らしい』


 と大声で魔王国を称え、


 勝手かつ正式に、魔王国を序列五位の大国として認めてしまい、

 結果、色々とややこしいモメ事が起きた。




 セファイルとフーマーはバチバチの関係になり、

 セファイルは、ついに、勇者をチラつかせて、無謀にもフーマーに威圧をかけた。


 フーマーはフーマーで、『お好きにどうぞ? かの強大なる者が、もし、我が国の領土まで辿りつけたその時は、褒美として、軽く相手をしてあげても構いませんよ』と煽る。



 国と国の関係など、規模が大きいというだけで、所詮はただの人間関係。



 『どこどこが嫌い、だから潰す』、『どこどこはどうでもいい、シカト』、『どこどこは色々と役にたつから、ケンカを売るのは保留』と、結局のところはそんなもの。






 『互いのルールをぶつけ合わせて、落とし所を見つける』という、

 無駄に時間ばかりを重ねていく面倒事を処理しなければいけないため、


 ハタから見ていると、なんだか壮大かつ複雑な事をしているように見えてしまうが、

 実際のところは、いつだって、しょうもないケンカの延長でしかない。



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