23話 取り戻したければ、私から奪いとれ、センエース。世のなかの資産というのは、そういうものだ。この世のすべてはイス取りゲーム。
23話 取り戻したければ、私から奪いとれ、センエース。世のなかの資産というのは、そういうものだ。この世のすべてはイス取りゲーム。
――『砦』は、『センの手の中にあるヨグソード』を、ジっと見つめ、
「……やはり、とてもいい剣だ」
そう言いながら、センとの距離を詰めると、ヨグソードの刃先をガっと掴む。当然のように『手から血が出ている』が一切気にすることなく、グイっと、力技で、センからヨグソードを奪い取ろうとする砦。
「人のポケ〇ンをとったら泥棒だって、ゲームフリ〇クに教わらなかったか?!」
などと言いつつ、
センは、グインっとヨグソードを華麗にきらめかせて、
砦の手をグシャっと切り裂いていく。
すると、切り裂かれた砦の手が、グニャグニャと、キモく形状を変えていき、
センの右腕にからみついてきた。
「キモぉおおおい!」
と、自意識強めの女子中学生ぐらいの勢いで叫びつつ、
どうにか逃れようとするが、
砦の執着が凄まじく、
鬱陶しくなったセンは、
「ちっ……」
いったん、ヨグソードから手を離した。
その瞬間、
『犯罪大国のベテラン置き引き犯』ぐらいの勢いで、
ヨグソードをシュルシュルゥっと豪速で回収していく砦。
砦は、センから奪ったヨグソードを、天に掲げ、
矯めつ眇めつ見つめながら、
「……ああ……やはり、素晴らしい」
などと、つぶやく。
センは、
「満足したか? じゃあ、返してもらうぜ。戻ってこい、ヨグ」
そう言いながら、パチンと指を鳴らす。
――本来であれば、『戻れ』と念じることで、
ヨグソードは、センの手の中に戻ってくるのだが、
しかし、
「……? あれ? ヨグ? ヨグさん? 何やってんの? 戻れって」
そう言いながら、何度かパチンパチンと指を鳴らすのだが、
しかし、ヨグは、借りてきた猫みたいに、砦の手の中でおとなしくしているばかり。
困惑しているセンに、砦が、
「これは本来私のものだ。よって、ヨグ=ソトースは私が管理する」
たんたんと、そう言われて、
センは、
「おい! ヨグ、帰ってこいっつってんだろ! 殺すぞ!」
どれだけの言葉を使っても、ヨグはうんともすんとも言わない。
そんな中、
砦が、
「取り戻したければ、私から奪いとれ、センエース。世のなかの資産というのは、そういうものだ。この世のすべてはイス取りゲーム」
「……意識だけ高い成金のIT長者みたいなことを抜かしやがって。返せよ、俺のヨグ。この泥棒!」
「……鹵獲された方が悪い」
「つぅかよぉ、ヨグソードは、キーブレ〇ド方式で、俺が心の中で『戻れ』ってコマンドを入力したら、戻るシステムになっていたんですけど?!」
「そのシステムに介入して改ざんするぐらいはできるが? それがどうした?」
「てめぇ……量産型みたいなツラしているくせに、総合的に、偏差値鬼高ぇじゃねぇか、このやろぉ……しゃーねぇなぁ……」
そう言いながら、センは、自分の胸部に、
自分の右手を突っ込んでいく。
「ぐふっ」
血を吐きつつ、
センは、
自分の胸部から、黒い血の塊みたいなものを取り出すと、
「おめぇの出番だぞ、シュブニグラスハート!!」




