17話 『才能』というアドバンテージがあるので、必死に頑張り続ければ『センエースの敵で在り続けるという夢』は叶うはず。――と、必死に自分に言い聞かせる蝉原。
17話 『才能』というアドバンテージがあるので、必死に頑張り続ければ『センエースの敵で在り続けるという夢』は叶うはず。――と、必死に自分に言い聞かせる蝉原。
「今の俺だと、『自力の限界』は……どんなに頑張っても『30億年ぐらいをワンセット』が限度。……200億×1万……。この数字は、『ヨグの協力』と、『センエースという名の、寄りかかることができる精神の杖』があって、初めてできたこと。……だから、俺は俺を誇ることができない」
蝉原は、センエースという概念全てを、シットリとした瞳で見つめながら、
「あらためて、センくんが積んできた、200兆×100万……2垓年という時間の重さを思い知ったよ。……現時点で、俺の精神は……『センくん&ヨグというサポートあり』だったというのに、限界の限界まですり減っている」
本来であれば、完全なソウルオーバーヒートで身動き一つ出来ないところだが、
蝉原は、『レイナの呪いに、自分の苦痛を混ぜて、センになすりつけた』ので、
現状、どうにか、普通に行動することができている。
「センくんは、俺の今の……『100万倍』を積んでいる……これは絶対に追いつけない数字。追いつけないけれど……追いかけないわけにはいかない。俺は……センくんの敵だから。敵で在り続けたいから」
センエースに『純粋な努力時間』で張り合うことは出来ない。
けれど、蝉原勇吾には、センエースにはない、『才能』というアドバンテージがある。
だから、努力時間では張り合えなくても、
必死に頑張り続ければ『センエースの敵で在り続けるという夢』は叶うはずだ……
――と、必死に自分に言い聞かせる蝉原。
「本物の相手は、本物にしかできない」
ギリっと奥歯をかみしめる。
心がごうごうと燃える。
積み重ねてきたものを、どうにか誇りに思おうとする。
でも、時折、『自分は結局のところ、センエースに寄りかかっているだけ』という事実を前に折れそうになる。
センエースを知って以降、ずっと不安定な悪魔。
センエースを愛している。
だから、ここまでやってこられた。
同時に、だからこそ、今、折れかけている。
蝉原勇吾は、センエースを親のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを我が子のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを兄弟のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを恋人のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを愛人のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを隣人のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを孫のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを祖父のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを上司のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを奴隷のように思っている。
蝉原勇吾は、センエースを主人のように思っている。
――蝉原勇吾は、センエースを男娼のように思っている。
「積んだ時間の量では……絶対に叶わない。それは分かっている。けど、だからって、そのステージから逃げていては、センくんの敵にはなれない」




