6話 面と向かって言葉を交わそうぜ。お前、ずっと、俺の向こう側に向かって、言葉を壁当てしているからな。
6話 面と向かって言葉を交わそうぜ。お前、ずっと、俺の向こう側に向かって、言葉を壁当てしているからな。
「誤解されるぐらいだったら、社会的に死んだ方がましだと思ったから、お前を利用した。それ以上でもそれ以下でもない。……ちなみに、お前が中学生じゃなく、小学生だったら、もっと最高だったんだけどな。『小学生は最高だぜ』なんて、公の場で口にしてみろ。どんだけの地位にある者でも、一瞬で終わりだぜ」
「怖かったのに、苦しかったのに、辛かったのに……それでも、ずっと、歯をくいしばって……みんなを守ってくれてたんやね……」
ぽろぽろと、涙を流しながら、
レイナは、
「あたしの奥にも……あなたへの想いはあったよ。あなたを愛している。あなたをずっと探しとった。あなたにもう一度会うためなら……なんでもすると誓った」
「何言ってんだ、お前。大丈夫か? 朦朧としているぞ」
「あたしのフラグメントの大半は、『シグレ』がもっていった。あたしは、ただのバックアップ。……トウシにとってのウラスケみたいなもの」
「会話しようぜ。お前の供述によると、仮にも俺を愛してんだろ? なら、面と向かって言葉を交わそうぜ。お前、ずっと、俺の向こう側に向かって、言葉を壁当てしているからな」
「あなたの命が……あたしの全部。あたしは背負う……黄泉の門より超えて咎を。無限の罪を」
そこで、センは這いつくばるのをやめて、
むりやり起き上がると、
レイナの頭をそっと撫でて、
「やめろ。背負わなくていい。何も。そいつは、たぶん、俺の荷物だ。知らんけど」
「あなたは詠う。いつか、必ず、万物のカルマは、黄金と天光に満ちた裁きを超えてゆく、と。たゆたう一瞬を飾りし刹那の杯を献じながら」
「何も詠っちゃいねぇよ。いいから、やめろ。俺はもう死にたいんだ。もう疲れたんだよ、パトラ〇シュ。なんだか、とっても眠いんだ」
「――あたしは、タナカ・イス・レイナ。豊穣と時の女王。あなたの中で、あたしは、永遠に、あなたに添い遂げる。それがあたしの、たった一つの罪と願い……」
光に包まれるセンエース。
名状しがたいメンヘラに包みこまれて、
センエースという概念が、また一つ、完成に近づく。
★
「――勝てない。あのイー・ト・ラーは強すぎる。田中や輝木じゃ、相手になっていない。本当に閃壱番が死んだのであれば……世界は終わった。閃壱番が死んだときに、世界も死んだ」
そんな久剣の言葉に、蝉原デスガンは、
「ふふ……」
と、おかしそうに笑って、
「人っていうのは、脆いね。……醜くて、ちっぽけで、足るを知らず、見栄っ張りで、おこがましく、厚かましく、そして、何より、薄情だ。愛され方を知らず、愛し方を知らず、だから、決して自由になれず、飛び方を忘れて、地を這いつくばる」
蝉原がダラダラとしゃべっている間、
イーは、何度も、何度も、星桜の頭を踏みつぶしていた。
まるで、『これから焼いて食べる肉』を叩いて柔らかくしているみたいに。




